「桜」英米ではサクランボ色
サクラ前線の北上によって春の訪れを知ることができる。東京の開花宣言は、靖国神社の木に三輪以上開くことが条件。花は咲き始めてから全部散ってしまうまで二週間余り。一つの花について見ると、開花から散るまでに約七日、開花から一週間後に満開となるのが普通で、花は六割ほど咲くと、人の目には満開と見えるらしい。
しかし、これはあくまでも平均値。実際は雨風や気温など天候によって大幅にずれ込む。今問題の地球温暖化の影響はどうなっているのだろうか。
頭の片隅では分かっているつもりでも、やはり今年の桜はと気になる。咲けば咲いたで、「明日ありと思ふ心の仇桜夜半に嵐の咲かぬものかは」(これは『親鶯上人絵詞伝』の上人の詠とか)と、天気予報では風も気になる。
この歌もそうだが、桜をめぐって素敵な歌や言葉がある。「桜伐る馬鹿梅伐らぬ馬鹿」は木の剪定法を教える言葉。「咲いた桜になぜ駒繋ぐ」、折角よい状態にあるものを妨害するものではないとする注意は、俗謡とは言いながらちょっと粋である。下には、「駒が勇めば花が散る」と続く。
桜は英語でチェリー、洋菓子の好きな子なら幼稚園児でも口にする英単語だ。これを桜色と訳しては失敗する。なぜなら、日本の桜は花の観賞が中心で、淡いピンク色が想起されるが、あちらは実のなる種類がほとんどなので、サクランボの色、鮮紅色、深紅色である。
桜の字は小学校では五年生で習う。きちんと覚えないものだから木偏に妥協の妥の字を書く間違いが多い。ズイと読んで、タラの木となる。桜は昔櫻と書いた。字は込み入って難しそうだが、二貝の女が木にかかる、と洒落て覚えれば何のことはない。晩餐の餐はトっタん又食う、挨拶はム矢くくくタ、などといろいろなところで、先輩たちから教わった。