Vol138「雷」雷も美女には弱い

「雷」雷も美女には弱い

雷のもとの字は雨かんむりに畾であった。畾は重なる意味で、稲妻が直線を重ねたように走るさまから、かみなりの意味を表すという。電光の電も雨+申で、稲光の象徴。日本語の「かみなり」は神鳴り、「いかずち」は厳(いか)つ(の)霊(ち)、恐ろしい神、威力を持つものの意である。
 雷とは雲と雲との間、あるいは雲と大地の間の放電によって、空中に光と音響を生ずる気象現象。その種類は熱雷、前線雷、低気圧雷に分類される。南アメリカやアフリカには年間二百日近くも発生する地方があるというから、すごい。日本では関東地方の西北部、中部・近畿・九州の山岳部は夏の三か月間に三十日を超えるところがあり、冬は北陸地方に多い。
 雷鳴と稲妻を神格化したものが雷神であり、稲の豊作をもたらす神である。落雷の多い栃木県や福島県には雷神を祀った神社が多く見られる。雨が降らないと農作物には打撃になる、かといって落雷の多いのも困るというところだろう。
 歌舞伎十八番の一つ『鳴神』では、朝廷にうらみを抱く鳴神上人が、天下に日照りをもたらしたものの、雲の絶間姫のお色気に惑わされて堕落する。雷神も美女の色香の前には神通力も失ってしまう。しかしこれは芝居の世界の話。実際にはヘアピンをしていた女性が雷に打たれ、亡くなったということもあるそうだ。
 落雷には気をつけないといけない。電車や自動車の中、鉄筋コンクリートの建物の中は安全地帯だが、木造家屋の窓際や壁にはよりかからないほうがいいし、テレビや電話から離れているに越したことはない。
 雷を避けるにはクワバラ、クワバラと呪文を唱える。菅原道真の領地の桑原には一度も落雷がなかったという。あるいは和泉の国の井戸に雷神が落ちたのを救った礼に、この呪文を教えてもらったからともいう。