Vol140 「寒」ウ三たてたて八ヽ ヽ(チョンチョン)

「寒」ウ三たてたて八ヽ ヽ(チョンチョン)

子どものころ呪文のように教わった。ウ三たてたて八ヽヽ(チョンチョン)。言われたとおりに書いていくと、寒の字のでき上がり。字書き歌である。遊び感覚で書くから、一度覚えたら、まず忘れない。街角には呪文を唱えなかった罰? の誤字を見かける。三たてたてのところカンを働かせて甘と書く誤りである。

昔の人は小難しい漢字を、正しくおもしろく教えた。二階(貝)の女が木にかかる=櫻、糸し糸しという心=戀、など。旧漢字で込み入った字だが、字書き歌ならOKである。常用漢字で木ツい女の桜さん、あちらからこちらへと亦心とりかえる恋、では詩心もない。間違えて木偏に妥協の妥を書くとタラの木になってしまうし、恋を変としたらラブレターは破レターになる。

寒の字は屋根の形のウに、草を敷きつめ、そこに人がいて、下に氷がある、という字だそうで、さむい・こごえるの意味になる。

ところで、「冬至、冬中、冬初め」といわれる。冬至は暦の上では冬の真ん中にあたるが、実際の寒さはこれからだというわけ。冬至のあとに小寒、大寒があり、小寒から立春までの約三十日間が「寒の内」である。年賀状を出しそびれたときなど、寒中見舞いを出せる。立秋を過ぎると残暑見舞いになるように、立春を過ぎると余寒・残る寒さになる。寒暑とも残りとはいうものの厳しい。旭川で最低気温零下四十一度を記録した明治三十五年一月末、大寒波襲来があの『八甲田山死の彷徨』(新田次郎著)を招いたのだった。

風もなく晴れ上がった夜は冷え込みが厳しい。地表近くの空気が極端に冷えると気温は上空に向かって暖かくなり、地表から二百~三百メートルあたりまで気温の逆転層になるという。ミカン栽培に不向きと思える筑波山腹は、平野部より暖かいので、福来( ふくれ) ミカンの愛称を持つ筑波ミカンが栽培されるのはそのためである。