KIRACO(きらこ)

Vol141 「亀」生きている化石

2020年2月20日

漢字を楽しむ

「亀」生きている化石

鶴と亀は長寿のシンボル的存在である。田舎の結婚式披露宴にはよく麺類が出された。姉の嫁ぎ先は山梨県小菅村だったが、ツルッとしたものをカメば、ツルカメ・ツルカメで、体の中にめでたいものが納まる。細く長くしなやかに、千秋万歳も疑いなく……と、司会者がユーモラスな口上で座を盛り上げていた。

亀は硬い甲羅で自衛することにより、長い時代を生き延びてきた。生きている化石といってもいい動物である。視覚と嗅覚は発達しているらしいが、聴覚は鈍いようである。大半の亀は昼行性で、池や沼・湖・河川の水辺の岸などに棲み、日中は日光浴をすることが多い。リクガメは植物質の餌だが、ほかは動物質のものを好み、雑食性も少なくない。

先日孫にせがまれて上野動物園に行った。孫は自宅でもミドリガメを飼っている(母親は仕方なく手伝っている)ので、「両生爬虫類館」がお目当ての一つであった。ミドリガメはミシシッピアカミミガメの子どもなんだよ、日光浴をしないと甲羅が軟らかくなり病気になりやすいよとか、断片的な知識は持っているらしく、それらの説明を交えながら興味深げに見学していた。

神話や民話にも亀が登場するのは、世界共通といえそうだ。浦島太郎に釣られた亀は一旦海中に帰されてから、美女となって現れて竜宮城に誘い、夫婦となる。三年が経って故郷に帰ってみれば七百年以上の年月が流れていた。形見の箱をあけると紫の雲が三筋上がった。浦島は鶴の姿になり大空に飛び立っていった。その後に、浦島太郎は丹後の国に浦嶋の明神として現れ、亀も同じところに神として現れ、夫婦の明神とおなりになる。めでたかった先例だと『御伽草子』には書かれている。

亀は象形文字で、亀の部にある。亀の旧字は龜で、十六画となる。秋の字も本字を使って龝などと書く場合がある。