KIRACO(きらこ)

Vol143 こんな事が起きるなんて!

2020年5月21日

吉成庸子さんのコラムを読めるのはKIRACOだけ

こんな事が起きるなんて!

櫻の花が咲いてぼたんの花も満開、空は暖かい色に染まり、雲の形さえ優しい。鳥の美しいさえずりが聞こえてくる一番おだやかな季節がめぐって来たというのに、今はなんという事だろう。世界中にコロナウイルスとかが、発生してたくさんの方が亡くなっている。

出来るだけ外出はさけなければならないのは、わかるが全く外出しないわけにはいかない。飲食店等は、ほとんどが店を閉じた。

私のやっているラウンジも、現在、一応の目標までの五月七日までやむなく休業に入った。こんな事、初めてだ。私はアルバイトで、中高生の頃ちょっとだけタレントみたいな仕事をしただけで、学校を卒業した二十三歳からすぐに飲食業を始めたのだ。虎ノ門での喫茶店を皮切りに割烹店、ケーキ屋さん、クレープの店、銀座でクラブをやる等、ひたすら飲食業の道を走り続けた。二十年近い期間を。朝から、晩まで、ひたすら走り続ける日々だったけど私は一生懸命だった。商売が好きだったのかもしれない。結婚なんてまったく考えてなかったし、ボーイフレンドもいなかった。そんな時間がもったいなかったし、デートなんてものするなら、一時間でも多く眠りたかったし、本が読みたかった。私は子供の頃から本が大好きで、それは現在もおんなじだ。十二時過ぎに帰宅しても必ず本を読む。原稿の〆切りに追われてる時は、原稿を書くがその他はほとんど読書をしている。早く寝なきゃとわかっているのだが、何故が読まずにいられない。

ガラス戸越しに、早朝の光が差し込んでくるのに気がつき、しまったと思い急いでフトンに入る。おまけに半分眠りながら読んだ所は、ほとんど覚えていない。つまらないことをしてるなあと反省しながらも、やめられずにいる今の私だ。

私の店は、休んでいる間の給金は支払うことと決めた。だってそれをたよりに、家賃を払い食費を払い働いている娘達もいるのだもの。支払ってやらなきゃ気の毒だもの。私は私の店、会社で働いている人は、皆、家族だと思っている。

昔から「一つ釜のめしを食う」とよく言うが、本当にそうだと思う。だから頑張ってやっていくつもりだが、私の手元を考えると、スゴクこたえる。のんき屋の私も少し不安だ。 

久し振りに忙しくない日がやって来た。そんな時本を読めばいいのだが、本を買うにも、本屋がない。千葉の近所ではそごうデパートの三省堂さん、千葉大病院坂下の多田屋さんがあるのだが
休店していると聞く。私の店の前の中島書店さんもやめてしまった。本当に困る。だが現在はネット社会だから、仕方ないかも知れないのだが、本には本の良さがある。私は本がもっと、もっと売れる様に心から願っている。まあ、アマゾンで本も売っているからさがせばいいのかも知れないが……私の本もアマゾンで売っている。安いのもあるがビックリする程高値の本もある。買って下さる方に悪いと思うし、どうしても必要にせまられ自分でも買っている。

今回、コロナで命を落とされた方々は若い方もおいでになるが高齢者が多い。私達をあんなに笑わせて下さった志村けんさんもコロナでお亡くなりになった。
どなたが亡くなってもそうだが、特に芸のため、おもしろく見てもらうため、コメディアンの方々がどんなに日頃努力しているか少しだけ知っている人間として、悲しい。七十歳になって初めての主演映画を撮るというのに、それも出演出来なくて亡くなってしまうなんて、本当に悲しい話だと思う。

私も、たくさんの方から、「気をつけなさい。家でおとなしくしている方がいいよ」といっぱい言われている。

私もそう思っている。家に半分、残りの半分は、「ホテル・グリーンタワー」さんにこもって、ゆっくり、原稿を書く予定にしている。

どこでも時間があれば原稿用紙に向かう私だが、だらしないので、一年分の書き上げたエッセイ十二本と、小説原稿一本失くしてしまった。勿論私の不注意だから、ぐちも言えないが……。私の場合一回書いたものをまた書くというのは、スゴク大変だ。思い出して同じに書こうとしても、まったく出来ない。だから今度は、まじめに原稿用紙に向かい出来上がったら、すぐ送ろうと考えている。

グリーン・タワーさんもレストランは閉じているそうだけど、宿泊はOKだそうだからきちんと仕事する覚悟だ。友達の多い私、そんな友達がみんな大好きな私、じいっとしてやれるかどうか自信がないけど、自粛しなければならない状況なのだから従うつもりだ。

店のお客様や従業員の人達とも、一カ月の別れはつらい。早く世界中からコロナウイルスが消えるのを祈るばかりだ。