Vol150 神楽坂
朝、近所の仲良しご夫婦が出かけるところに会った。
「神楽坂へ孫に会いに——」。孫、いいよねえ、ただただかわいいし、パワーを与えてくれるし——。
それにしても「神楽坂」。昔、花街だったという先入観があるせいか、私には華やかなイメージがあるまちだ。
神楽坂—。
坂の途中、右側に中華料理店がある。『五十番』ていう店だったと思う。大きな大きな肉まんは種類が多く、どれも中身がいっぱいでずっしり。買って帰ってもおいしく、手みやげにしても喜ばれた。
飯田橋の駅のほうへ少し戻った右側に『毘沙門天・善國寺』。朱色の建物が美しい。
その向かいあたりに呉服のリサイクルショップ。以前から欲しいと思っていた大島紬を「エイッ」と買ったっけ。
その先の小路を入ったところに小さな二階建ての宿があった。
締切に追われた文筆家が「カンヅメ」になって執筆する宿で、ガイドブックを作っていた頃、そこに泊まってひとときの文筆家気分を味わった。朝食がおいしい宿だった。
駅を出て反対側の富士見にあったタウン誌の分室でも仕事をした。ユニークな企画で有名な社長は「資金繰りが大変」と嘆いていた。それを聞いて「タウン誌なんかやるもんじゃない」と思っていた私。なのに『きらこ』は25年になる。(郁)