夏の猛暑冬の極寒で有名なベルリンは首都故に修学旅行の目的地になる。10年余り前のこと。その頃から異常気候も顕著になり、緯度の高いドイツでも気温は35度を超えるようになっていた。満員のインターシティの冷房装置が故障した。車両の窓は開けられない。代替の車両が到着し乗り換えた途端また故障。密閉された車内の温度はぐんぐん上昇。バタバタ倒れた生徒の宿泊先は病院になってしまった。ドイツ鉄道のスポークスマンによると『外気温を最高32度と想定して設計していたので』…。
今夏、40度以上の高温警報が何度出されたことか。南欧の森林を焼き尽くす燎りょう原げんの火は勢いを増し、深刻な渇水状態のドイツ東部の山火事も異常乾燥で絶望的に広がるばかり。日本のように異常な高湿度でないだけ、息もできないという苦しさはなく夜間は冷え込むが、この乾燥もまたきつい。明け方には喉の痛み、全身の渇きで肌がひび割れる気がして目が覚める。
数年前から出回り始めた扇風機が、コロナ蔓延防止の空気清浄機、冷風装置、エアコンとどこでも見られるようになった。が、日本の超省エネタイプと比べれば数世代遅れている。
政権の一端を担う「緑の党」には致命的な状況が今のドイツだ。前回の総選挙でスウェーデンの活動家グレタ嬢に便乗し大勝。その後のロシアの暴挙、エネルギー危機である。地中海の国々でも熱中症で1,000人を超える死者が出た。これからますます電力消費量が増大することを彼らは想像できない。再生可能エネルギーは全電力の41%に過ぎず、頼りの風力発電は「天候に左右され」去年は一昨年の13%減。足りなければ隣国の原発から分けて貰う…で、いいの?さらに、あろうことか「ドイツには褐炭がある!」と盛り上がる始末。石炭の中でも最も低品位の褐炭が、1952年の大気汚染の始まり、1万人以上の大量死者を出したロンドンのスモッグの元凶だったこと、忘れたの?実はドイツは未だに火力発電に頼ること30%を超え、うち粗悪な褐炭がなんと60%を占めている。その状態で「薪の暖炉は微細粉塵を出すから禁止すべき」と言い出す。ガスに依存させられた挙句、電力も不足、薪も燃やすな?料理もできず暖房もなく、冬はどうしろと?年末のガス料金は四人家族で1000ユーロ増し!と言われている。しかしそんなことで苛々しているのは私一人のようで、目下周囲は夏のバカンス以外懸念はないようだ。空港はコロナ禍で大量馘首したため極端に人手不足。搭乗5時間前には来い?乗り遅れは自己責任?紛失荷物は後日取りに来い?文句があるなら国に言え?但し勝算なし、だと?
子供たちは「金曜日を未来のために!」と声高に叫び、授業をボイコット、路上に集結していた。なぜ金曜日?週末にはしないの?長期休暇中にも結集はしない。あらら、未来のためにと、大人のやることを非難してなかったっけ?より賢い大人になるための貴重な学びの機会を、放棄していいの?「隔日にPCを消そう!携帯のスイッチを切ろう!」などという省エネの具体策を彼らから聞いたことはない。夏休みには家族連れで空港は溢れかえり、アウトバーンは渋滞している。一体何を心配して何に抗議し、どうしたいのかどこを目指すのか…人間って、みんな、変。
それに比べれば猫は何も語らず、誠に自然体。熱暑のうちは家の周り東西南北に夏の離宮を構え、陰に溶け込み、風を聴く。
雨ニモマケズ風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ…
そういう猫に、私もなりたい。