KIRACO(きらこ)

vol163 ひもづける

2023年9月1日

編集室から

言葉の世界の隅っこに席を置いているので、ときどきこれ変!と思う言葉にひっかかる。
「食べれる」じゃない、「食べられる」だろう!
「れる」「られる」の使い方が気になって、テレビに向かってわめいている。
「ひもづける」。なに、それ?

パソコン、インターネットは得意の分野ではないからカタカナの言葉は、なに、それ?と聞かれても説明できない。

「ひもづける」。今まで聞いたことがない日本語。

マイナンバーカードという一枚のカードに健康保険証や年金情報などいくつかの情報をひもづけるということらしい。そこでヒューマンエラーがみつかって、個人情報が洩れると連日、問題になっているというのだ。

分からないことがあったら辞書をひく。

今まで、そうしてきた。

久しぶりに岩波書店の『広辞苑』を棚からおろす。重い。厚さ8センチあまり。背表紙がパックリはがれている。「昭和四十四年五月十六日第二版第一刷発行」とある。

「ひもづける」は、ない。「紐(ひも)」は「①物を束ねまたは結びつなぐ太い糸。 ②娼婦などの情夫で金銭をみつがせている者」とあって、ああそうだったねと笑ってしまった。

このほかにも旺文社の『古語辞典』、講談社の『日本語大辞典』、三省堂の『例解古語辞典』、講談社の『アラマタ大辞典』など引っ張り出して調べたが、「ひもづける」はどれにも載っていなかった。 (郁)