鎌は穀物を多量に収穫する農業の発達とともに、人類にはなくてはならない道具として発達してきた。
西洋では紀元前四〇〇〇〜前三〇〇〇年にエジプト、バビロニアで用いられた火打石で作った直刃鎌がもっとも古いとされ、前二〇〇〇〜一〇〇〇年ごろにはローマで作られた鉄製の鎌が各植民地に普及したという。中国では新石器時代後期に石鎌が現れ、穀物の穂首刈をするための石包丁が現れたという。これが朝鮮半島経由で日本の弥生時代に用いられたが、鉄製鎌(中国では戦国時代に出現した)の普及で次第に消えてゆく。その後も鎌の角度が変わり、作業目的に沿った鎌が作られ、著名な鎌が各地に現れるなど、改良進歩が繰り返されて現在に至った。これが鎌の歴史である。
現在でも世界全体を見渡すと、穀物の収穫の大部分は鎌によっているものと考えてよかろう。日本の農業で、稲や麦の収穫はバインダーやコンバインによるものが多いが、雑穀類の収穫や草刈には伝統的な鎌が今なお使われている。
私は田舎で使っていた草刈鎌を今でも後生大事に持っている。マンション住まいを始めたので、いよいよお蔵入りかと思ったが、自治会員総出で近くの公園の草刈がある。自治会用の鎌もあるが、自分専用の鎌のほうが使い勝手がいい。
ムラの総出の草刈といえば、旧盆の前に一軒一人の割で参加する道普請が年中行事だった。隣のムラまで道路の普請や周囲の草刈をした。学生だった私も一人として教えられ、父の草刈大鎌を借り受けて出かけた。そういうときでないと、大切な鎌は貸してもらえなかった。
鎌は金偏に兼。音符の兼は稲などを集め、手にする意味だという。鎌は稲などを手に握り集めて刈るための意味を表す。