KIRACO(きらこ)

初代「波の伊八」没後200年 記念特集

2024年1月31日

NEWS

2012年3・4月号の『きらこ』(Vol.94)に、「千葉の誇り『波の伊八』伝えたい」のタイトルで、習志野市の「伊八会」代表者の當間隆代さんの特集が載っていましたが、當間女史は志半ばで昨年10月に急逝されてしまいました。(合掌)

當間女史が追い求めていた「初代波の伊八(武志伊八郎信由)」は江戸期の神社仏閣などの建物装飾(欄間等)の彫物大工(彫工)でその系統は五代200年間、昭和29年まで続きました。ちょうど今年は、初代伊八没後200年目に当たります。

當間女史のグループ「伊八会」と私どもの「波の伊八鴨川まちづくり塾」が共同で、三年前から「初代波の伊八没後200年記念キャンペーン事務局」を立ち上げ、パネル写真展を伊八の彫刻がある東京杉並区の「堀之内妙法寺」や寅さんで知られた「柴又帝釈天題経寺」で行いました。

また、伊八の作品の鑑賞ツアーも企画して、「波の伊八」ファンを増やす努力を重ねてきました。

今年も引き続き鑑賞ツアーを継続する予定です。

また、今年5月には、鴨川市の大山不動が開山千三百年になりますので、共同企画として5月19日(予定)の柴燈護摩(火渡り神事)に併せて、伊八にちなんだ講演会や講談(神田葵さん予定)、演歌歌手による伊八の歌謡ショー、地元の神楽の披露に加え、小学生を対象にした彫刻のワークショップ等も行い、賑やかしに地域物産のマルシェなども計画しています。

▲「伊八の波」といわれる独特な波の表現。行元寺の彫り物はその代表的なもの。現在、いすみ市郷土資料館で見られます。

関東に行ったら波を彫るな

伊八が「波の伊八」といわれる所以は、波頭が崩れる瞬間を横斜め下からとらえた浪の構図の独特な表現に秀でており、関西の同業仲間に「関東行ったら波を彫るな」と言わしめたほどで、「伊八の波」と言われる独特な波の表現から来ています。

その為、葛飾北斎の世界的に有名な版画、富嶽三十六景神奈川沖浪裏に影響を与えたともいわれています。

この独特な波の彫り物は、いすみ市の飯縄寺や行元寺(現在改修工事中のため、いすみ市郷土資料館「田園の美術館」で保管)で鑑賞できます。

伊八の作品は、龍も数多く、見事

伊八は、波の彫刻だけではなく、龍の彫刻にも独特なものが多く、傑作として知られているものもあり、伊八晩年の作である長南町の称念寺の龍三態は必見です。

そのほか、南房総市の智蔵寺、大聖院、宝珠院。館山市の瑞龍院、知恩寺。大多喜町の宝聚院。長柄町の飯尾寺。いすみ市の長福寺、光福寺。勝浦市の覚翁寺。鋸南町の大行寺。鴨川市の大山不動。富津市の見性寺、三柱神社。

などなど、聖獣の龍が盛んに彫られ、欄間の枠に収まらない初代伊八の作品が鑑賞できますので、制作年代ごとの違いを堪能してみてください。

▲称念寺
▲智蔵寺

伊八は、波、龍以外にも素晴らしい構図の彫り物を多く残しており、その地域の人々の思いや願いを形にした作品も多く、七福神や酒仙は殊に特徴的です。

鴨川市の鏡忍寺祖師堂の欄間の七福神。酒仙の図は、鴨川市の伊八の墓所の近くにある金乗院の大日堂欄間で、一見の価値があり、伊八が彫るとこんな風になるのか感心させられます。

▲金乗院大日堂「酒仙の図」
▲長福寺
▲飯縄寺
▲飯縄寺

初代から五代の足跡

初代伊八は、未確認を含め生涯に百十二箇所の作品を残しており、五代の中でも特筆すべき活躍をした「大名人」といっても過言ではありません。前述の當間女史が生涯をかけ追い求めた対象であったことが納得がゆくものです。

初代伊八(武志伊八郎信由)の活躍した地理的な範囲は、千葉県が中心でしたが海を隔てた神奈川県横須賀市の真福寺、東福寺や湯河原町の素鵞神社(スガ)、そして、その隣の静岡県熱海市の伊豆山神社にもおよんでいます。機会がありましたら是非鑑賞してみてください。

二代目伊八(武志伊八郎信常)は、茂原市の藻原寺本堂の向拝の龍三態図や鴨川市の満光院の龍と波が代表作です。

三代目伊八(武志伊八郎信美)は鴨川市に多くの作品が残っていて、花蔵院の向拝・虹梁の竜、男金神社の拝殿向拝の竜、珍しいものでは、小湊誕生寺の太田稲荷堂の虹梁の竜の裏側に魚が群れて泳ぐさまが彫られています。

四代目の伊八(高石仙蔵)の代表作は、なんといっても柴又帝釈天題経寺の二天門(山門)や帝釈堂の彫刻です。あまり知られてはいませんが、鴨川市の楞厳寺(リョウゴンジ)本堂欄間の大作、十六羅漢の図は見ごたえがあります。また、珍しい彫り物として、鋸南町中佐久間の密蔵院の屋台の竜もあります。

五代目伊八(高石信月)は、鴨川市天津小湊町の西連寺薬師堂の向拝の竜や単体の大黒像や布袋像、達磨立像(個人所蔵)なども手掛けています。

今年は辰年 〜伊八の龍と七福神巡りで初詣を〜

今年は辰年です。新春に今年一年の幸運を願って、初代波の伊八の作品が公開されている社寺をご紹介しましょう。

初詣にぴったりの縁起の良い七福神の彫り物と辰年にちなんだ龍が鑑賞できるコースを改めてご紹介します。

七福神巡りは、ちょっと遠方ですが、鴨川市の郷土資料館には舎那院の「恵比寿と唐子」「大黒天と布袋と唐子」の二面の欄間彫刻が展示されています。

本命は鴨川市広場の「鏡忍寺」祖師堂の「福禄寿・恵比須・弁財天・唐子・亀」「大黒・毘沙門天・鶴」「布袋・寿老人・唐子」の三面の欄間です。恵比須様が釣竿を担いで踊っていたり、他の七福神たちが酒盛りをして楽しんでいる構図に思わず微笑んでしまいます。鏡忍寺は除夜の鐘を衝けることもあり、大晦日から参詣者で賑わいを見せています。そして、新春の参詣は節分まで続きます。

辰年にちなむ龍の彫り物は、なんといっても鴨川市の長狭地区の「大山不動尊」の向拝の龍です。不動堂を見上げると翼のある飛龍が雲を呼び、その下の波の中に地龍がいるダイナミックな構図で迎えてくれます。堂宇に入ると大黒像やご本尊の一つ「俱利伽羅龍」も拝むことができます。

伊八の彫刻の写真は『初代波の伊八~武志伊八郎信由の世界』『武志伊八郎信由作品集』(いずもれ発行者 伊八会當間隆代)に掲載されているものです。