KIRACO(きらこ)

Vol166「暁」お江戸日本橋……四時発

2024年4月4日

漢字を楽しむ

昔の人は朝が早かった。
「お江戸日本橋七ツ立ち 初上り 行列そろえて アレワイサノサ コチャ高輪夜明けて提灯消す コチャエ、コチャエ」

七ツは今の時間でいうと午前四時ごろ。提灯が必要だった。また、どんなに早く出発しようと思っても、当時の江戸の木戸は開かず、往来もできなかった。いくら早くても七ツ立ちだというのである。鼓鐘による呼び方は夜中の九ツ、午前二時の八ツから順に四ツまで、次が昼の九ツになってまた四ツまで。今も残る間食を意味するお八つはこの名残である。

私の子どものころの遠足というと早起きして幾山かを越えて最寄の始発駅までたどり着く、それが第一関門だった。今は懐かしい思い出となっているけれど。

あかつきは明時の意のアカトキが変化した語。夜から朝への時間区分を現代式に書くと、夕べ・宵・夜中・暁・曙・朝、となる。

最近はどうか知らないが、あかつき・あけぼの・つとめて(早朝)の三語を時間的順序に並べよ、と大学入試問題があって学生諸君を悩ませた。私は五十音に並べてみたらと助け舟を出したことがある。

暁・曙の薄暗い時分を、彼は誰時という。あれは誰と見分けがつかないような時刻、主に明け方をいうが、夕暮れにもいう。夕暮れは誰そ彼、のちにたそがれ。誰だろうあれはと見分けがつかない夕暮れ時分をいう、黄昏とも書く。

暁のもとは曉。堯には高いという意味があるから、暁は日が高く昇り始めるころをいう。夜が明けて次第に周囲が明るくなり、物の姿形が見えるようになるので、さとるの意味となる。人の名前で暁とあった場合、あき・あきら・あけ・さとし・さとる・とき・としなどと読むことができる。頭をひねって無理やり読むよりは、先に本人にきいてしまったほうがいい。