一般社団法人フェーズフリー協会理事松崎元教授に聞きました
毎日ニュースで見聞きするように、事件や事故、地震や台風、自然災害から戦争まで、世界中のどこかで、さまざまな危機が私たちの暮らしに不安をもたらしています。災害が起こるたびに、防災意識は高まりますが、どのように取り組んだらよいか、どのくらいお金をかけるべきか等、分からないことも多く、私たちは「備える」ことが難しいまま暮らし続けています。皆さんは「フェーズフリー」という言葉を知っていますか?
最近たまに聞くようになったこの考え方について、一般社団法人フェーズフリー協会の理事で、千葉工業大学教授の松崎元(まつざきげん)先生が分かりやすく解説します。
1)フェーズフリーの「フェーズ」ってなんですか?
「フェーズ(Phase)」には、流れている時間の中での「段階」や「局面」といった意味があります。ここでは、「いつも」と「もしも」という2つの場面について考えてみましょう。
2)フェーズフリーを分かりやすく言うと?
「いつも」と「もしも」をフリーにする、つまり備えなくても少しずつ備わった状態を作り出していくという考え方です。身の回りの事件や事故、大きな自然災害など、普段と違う状況になったときも、いつも通りに生活ができるようにしておくこと、それがフェーズフリーの基本的な考え方です。
3)誰が考えた言葉ですか?
2014年に社会起業家の佐藤唯行(さとうただゆき)さんが提唱しました。災害が起きるといつも多くの人々が悲しい思いをする、そうした現場を何度も目にし
てきた佐藤さんは、どうしたら備わった社会を作れるのか、備えなくても備わった状態にするにはど
うしたらよいのかと思いを巡らせ、フェーズフリーの発想にたどりつきました。
4)フェーズフリー商品って防災グッズですか?
災害の時にしか役に立たない防災用品は、フェーズフリーな商品ではありません。いつも便利に使えて、非常時にも役に立つ、そんな物やサービス、施設などがフェーズフリー商品で、フェーズフリー協会が認めたものをフェーズフリー認証品として公表しています。
5)フェーズフリー認証品にはどんなものがありますか?
きれいなデザインで計量もできる紙コップ、歩きやすく帰宅困難時の長距離歩行にもよいビジネスシューズ、自身の健康管理に使え家族を見守ることもできるスマートウォッチ、賑わいを生み出し津波から避難もできる道の駅など、たくさんの認証品があります。
6)松崎先生からみなさんへのメッセージ
私たちの生活の中には、たくさんの知恵が詰まっています。自動車やスマートフォンなど、こんなに素晴らしい道具を発明し、何万年もかけて日々の生活が少しずつ便利なものになってきました。「アイデアで社会を変える」この営みを、「いつも」と「もしも」をフリーにするために使ってみてはどうでしょう。そうすれば、10年後、20年後には今よりずっと安心して暮らせる社会になっているはずです。