KIRACO(きらこ)

Vol.168「敵」人類の天敵は?

2024年8月1日

漢字を楽しむ

イメージとしてはあまりよくない感じではあるけれど。まず、わが子の名には絶対に採用し
ない。ではあるが、ここにあえて採り上げる。

辞書には敵の字の意味を大きく分けて、①あだ・かたき、敵意・敵対・仇敵・天敵 ②相当する・対等である、好敵手・無敵・匹敵などと載せてある。

敵本主義とは、いかにも目的が外にあるように見せかけて行動するやり方をいう。しかし、これだけでは分かりづらい。昔、明智光秀が毛利氏征伐のために中国地方に向かうと見せかけて、途中で急に「敵は本能寺にあり」といって馬を返し、本能寺を襲って織田信長を攻め殺した故事によるといえば胸にすとんと落ちる。

歴史に由来する言葉には、敵に塩を送るがある。上杉謙信が、今川・北条の塩攻めで苦しんでいる武田信玄に塩を送ったという逸話から、敵が苦しんでいるときに、かえってその苦境を救うこと。政経分離、人道的支援というと聞こえはいいが、果たしてそんな綺麗事だったろうか。

敵を見て矢を矧ぐ(矢を矧ぐは、矢に矢羽をつけること)も、時代を感じる言葉である。事が起こってからあわてて準備に取り掛かること、後手に回ることのたとえ。

素敵なデザインと使う敵もあるが、素的・素適とも書く。すばらしいの下略のす、敵は接尾語かというところで、これは単なる当て字のようである。

漢字の敵は、攵(攴)+啇。啇は啻と同じで帝の後継者とか、中心に集まり寄るの意。これに支を加えて相対するもの、敵対するものとなり、手向かっていくの意味になるという。

天敵は自然界の食物連鎖で、ある動物が他の動物を捕食する場合、捕食される動物の側から捕食する動物をいう語、例えばハブに対するマングースの類。食糧の絶対的な危機が到来しても、人間を天敵にしないで生き延びるのは何だろう。