大人も子どもも意外に手強い漢字らしい。まず大人、收が旧漢字であったところから抜け出せないで、攵だったか又だったか迷う。教養が邪魔をしているという見本である。
子どもは収で育っているからこの心配はまず、ない。ところが高校生でも、収の最初の一画は?総画数は?部首名は?と矢継ぎ早に質問すると少々怪しくなる。正解は順番に|、四画、又である。つまり文字が左右にブレないようにまず|から書く。次に書くのはレ、明朝体で形を整えるためにレは二筆で書いたように見えるが、レが正しい。そして部首の又となる。
収の旧字收の左側はまつわるの意味、右側の攵(攴・又)は強制するの意味。物をまつらわせる・からめとる・おさめるの意味を表す(『漢語林』)。
おさまる・おさめるの同訓異字も注意していないと間違えてしまう。昭和四十八年に当用漢字音訓表が告示されたとき、参考資料として発表されたものから。
収まる・収める─博物館に収まる・争いが収まる・効果を収める・成功を収める・目録に収める
納まる・納める─品物が納まった・国庫に納まる・税を納める・注文の品を納める
治まる・治める─国内がよく治まる・痛みが治まる・領地を治める
修まる・修める─身持ちが修まらない・学を修める
さてこれでうまく胸におさまったかどうか。
押入れの中をガサゴソやっていたら、古い紙袋が出てきた。「切手蒐集」と毛筆で書いてある、中学三年の夏休み自由研究の一部だった。昭和二十一年の当用漢字制定は漢字使用を制限する考えから、漢字表にない漢字は、同音の漢字による書き換えが行われた。蒐荷→集荷、蒐集→収集とある。
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