KIRACO(きらこ)

「捕」逃げるのを捕らえる

2025年12月11日

漢字を楽しむ

 捕は扌+甫で、音符の甫は稲の苗とか、根を包み込んだ苗木の形とかをいう。しっかり手に
するのが捕ということになる。

 「とる」を漢字に当てる場合、手に取る・資格を取る・連絡を取る・年を取る、血を採る・会議で決を採る、筆を執る・事務を執る、写真を撮る・映画を撮る、などと使い分ける。これに対して捕は、ネズミを捕る・生け捕る・捕り物、と使う。どの文字を使ったらいいか迷ったときは、熟語を二、三思い出すといい。

 手紙を書くときなどは、分からなければ辞書に頼ればいいのだが、それでもどうしても分からなければ、かなで書くのも最後の手段、間違えるよりはいい。

 「とらえる」も同様で、鳥を捕らえる・現行犯で犯人を捕らえる、逃げようとしているものを取り押さえる意が、捕。機会を捉える・バットがボールを真っ芯で捉える・言葉尻を捉えるなど、しっかりとつかまえる意が、捉。でも、こちらはかな書きすることが多い。

 一六五一年の慶安事件、由比正雪に誘われ反幕府の陰謀に加担した丸橋忠弥は捕らえられ、品川ではりつけの刑に処せられた。槍術道場の門人や浪人を語らい、江戸城攻撃を受け持った。堀に石を投げ込んでその深さを測ろうとした話は有名である。内偵と密告によって発覚、事件は未遂に終わったが、門人に守られた槍の使い手の忠弥を逮捕するのは容易ではない。その彼にも弱点があった。それは、オッチョコチョイな性格。道場の外で「火事だ、火事だッ!」と騒ぐ声にパッと飛び出したところをあっけなく捕縛されてしまった。

 相手の虚をついて捕らえる、この方法は狩猟を始め至るところで行われる。食虫植物もうまい捕らえ方をする。相手にしてみれば、やり方がキタナイ!ズルイ!

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