国技館に幽霊?
スポーツ観戦にはあまり興味のない私なのですが、唯一足まで運んでこの目で観たいと思うのがお相撲なのです。
以前このきらこ誌にも《白鵬》に関して書かせて頂いた事がありましたが、あの頃から両国での開催は欠かさず観に行っていました。
ところがお相撲もご多分に漏れずコロナの洗礼で、今年は大幅に変貌。
最近は三密を避けるため、観客人数を制限、声を揚げての応援も禁止(拍手のみOK)。お楽しみの枡席での飲食も厳禁。
ですから観客はほどほどに埋まっているというのに、館内は気味悪いほどシーンと静まり返っている感じなのです。
でも、そんな中だからこそ輝くのが、呼び出し行事の、あの凛と透き通った声。
普段の場所では観客のざわめきでかき消され、あの日本古来の情緒ある節回しも聴き取り辛いのに、発声時の《息継ぎの音》まで聞き取れるという、これはもう想定外の感動でした。
しかも今場所の私は、ナンと普段なら《定員四人》のマス席を独り占め!というとんでもない恩恵に預かったのです!
それというのもコロナでのチケット制限で、抽選に当たるのは至難のワザ。
以前もクジ運が悪くて泣く泣く一場所見送った苦い経験があったので今回は策を練って(どっちかが当たるだろう)と、二枡申し込んだのでした。
それが二つとも取れ、しかも《千秋楽》のチケットとは!
ところで今場所の大相撲。いつもと違った話題がネットをざわつかせていたのをご存じでしたでしょうか?
普段から私は録画を撮って、家族と夕食を食べながら観るのですが、(あれ?あの人、また今日も東側の同じ桟敷席に座ってるわ)
以前にも同じような事はありましたが、それはごく普通のオバさんの感じで、話題にも上らなかったのです。
ところが今場所のその女性は実に美しい!といっても大きなマスクをつけているので美人かどうかはサダカでないのですが、背筋をピンと伸ばし、身動ぎもせず正座を続けているその姿は気品があって、とにかくオーラが凄い。
毎回夕食時に録画をみながら
「あ、お嬢様、今日も来てるぞ」
「今日は白のワンピースね、バッグも毎回違うし」
「ネットでも騒がれてるみたいよ」などと取り組みそっちのけでの大盛り上がりでした。
なんせ《好奇心の塊のナカダ》です。すぐさま何時ものデンでスマホに向かい《ヘイ・シーリー!》と呼びかけました。
「国技館に毎日来ている美しいヒトは誰ですか?」
「ハイ コクギカンニマイニチキテイルヒトニツイテオコタエシマス」
画面に次々現れるコメント情報。
そこには想像以上に多数の方がザワついている様が見て取れました。中には「もしかしたら幽霊なのでは?」というコメントさえあって、お相撲を見るよりも美女をこの眼で見たいという楽しみの方が上まわりワクワクで迎えた千秋楽当日。
美女はすでにスラッとした背筋で例の席に座っていました。
私、まずは荷物を置き、その足ですぐ売店へ。実はちょっとした土産物でも、大きな手提げ袋をくれるのを知っていましたから、戻りはお嬢様近くの東の入口から入ろうという魂胆です。
入口でチケットを提示すると、案の定、「西側はもうひとつ向こうの入口になりますが」と言いながらも私が土産袋ひとつの再入場者であることに気付いて、「こちらから入って通路を回って下さい」(シメタ!)歩きながら私は土俵上を写すふりでカメラをカシャカシャ。
終始身動ぎもせず一点を見つめているその姿に、ネットで見た《幽霊説》・・・が蘇ります。
とは言え、やはり大相撲の華は優勝杯へ向けての力士同士のぶつかり合い!
あの貴景勝と照の富士との緒戦には大興奮でした。
又、ひときわ小兵の炎鵬が、敗けても敗けても食らいつくあの涙ぐましい姿にも心打たれます。
そして迎えた表彰式。君が代はコロナのせいで声に出して歌うことは出来ませんでしたが、気が付けばあのお嬢様もきちんと立ち上がり、まっすぐに土俵を見つめながら歌っています。
その姿からは《幽霊》とは程遠い、凛とした美しさが!
というワケで、いつにも倍しての大満足で国技館を後にしたナカダなのでした。