KIRACO(きらこ)

Vol148 鉛筆片手に

2021年4月29日

編集室から

鉛筆片手に

文章を書く、冊子をつくるなどという仕事をしていると「さぞかしパソコンを駆使して…」と見られる。

そりゃそうだ。

こんな便利なものはない。

パタパタッと文字を打ってポンとキーを押すと原稿は一瞬にして印刷所へ飛んでいく。

編集室のデスクに向かっていなくてもいい。電車の中でも、ときには入院先のベッドの上でも原稿は書けるのだ。

その素晴らしさ、便利さを知っているのに私の原稿は未だに手書き。

そう言うと「えーっ!」と人は驚く。古ーい奴だとお思いでしょうが、ものぐさ、頑固なのだ。

ずいぶん昔、ガイドブックのライターをしていた頃、パソコンを使っていた若い女性に「便利よね、これからはこの時代」と言うと「とりあえず埋まってしまうから、いい文章が書けているかどうか」と言う。

「そうだよね」。我が意を得たりとはこのこと。

そして未だにボールペンで手書き。

ほんとうは鉛筆で書きたい。3Bか4Bで。

ナイフで削りながら次の文の構成を考える、出だしを考える。

これぞ至福のとき。 (郁)