鉛筆片手に
文章を書く、冊子をつくるなどという仕事をしていると「さぞかしパソコンを駆使して…」と見られる。
そりゃそうだ。
こんな便利なものはない。
パタパタッと文字を打ってポンとキーを押すと原稿は一瞬にして印刷所へ飛んでいく。
編集室のデスクに向かっていなくてもいい。電車の中でも、ときには入院先のベッドの上でも原稿は書けるのだ。
その素晴らしさ、便利さを知っているのに私の原稿は未だに手書き。
そう言うと「えーっ!」と人は驚く。古ーい奴だとお思いでしょうが、ものぐさ、頑固なのだ。
ずいぶん昔、ガイドブックのライターをしていた頃、パソコンを使っていた若い女性に「便利よね、これからはこの時代」と言うと「とりあえず埋まってしまうから、いい文章が書けているかどうか」と言う。
「そうだよね」。我が意を得たりとはこのこと。
そして未だにボールペンで手書き。
ほんとうは鉛筆で書きたい。3Bか4Bで。
ナイフで削りながら次の文の構成を考える、出だしを考える。
これぞ至福のとき。 (郁)