Vol151「芋」九里よりうまい十三里
昔こんな二段なぞがあった。「田子の景、富士の雲」。出題は百人一首を連想させ、答は似ても似つかぬ芋であるから、そのプロセスを考えて欲しい。
分かってしまえばコロンブスの卵みたいなもの。
よく考えたものだ。
『新撰何曾遊び言紐』から。
芋のなぞで有名なのは十三里。
初めは芋または焼き芋の味が栗に近いという意味で、洒落て八里半としおらしかったのが、やがて栗(九里)より(四里)うまい計十三里と勢いづいたものらしい。
芋は世界各地に広く分布し、古くから利用されてきた。
日本で食用にしているのはサトイモ・ヤマノイモ・サツマイモ・ジャガイモなど。この他にも根や地下茎が肥大したなどと詳しく見れば、クズ・クワイ・コンニャク・ナガイモもある。
芋は本来サトイモの意、藷・薯はサツマイモ・ジャガイモの意。
今は一般に芋と書く。
芋の于は大きいの意味、最後の画をはねる。
ジャガイモは世界で最も広く栽培されている。
中国・ロシア・欧州諸国での栽培が多く、日本では北海道が主産地。食用のほかデンプン採取用や養豚の飼料にする。
1601年、オランダ人がジャワから導入したのが最初で、救荒作物として栽培され、ジャガタライモと名づけられた。
甲斐の代官中井清太夫の尽力で食糧難を乗り越えたこともあった。
子どものころ、セエダイモと話す古老が周りにいた。
明治以降アメリカから川田男爵が優良品種を再導入、栽培が普及した。
サツマイモの主産地はダントツで中国。
第二位以下はウガンダ、ナイジェリア、インドネシア……。
日本では鹿児島・茨城・千葉・宮崎など。
名前は薩摩地方でよく栽培されたから。
甘藷・琉球藷・唐藷などともいい、芋代官井戸正まさあきら明や青木昆陽などの努力もあって広く普及した。
冒頭のなぞ解き。田子退の け・い、富士退の く・も、となるので残りが、いも。