天候関係の文字について、この先書きつづろうと存じおり候、と格別候文で書くつもりもないのでご安心を。候とたいへんよく似た字があり、間違えやすい。王侯貴族の侯である。
もともと同じもので、的をうかがい矢を放つ形から、王室のために邪気の侵入をうかがい除くの意味を表した字。のちに侯が公侯伯子男の五等の爵位に用いられるようになって、候の字が作られたという。
候は常用漢字ではあっても、日常ほとんど使われることがない。候は小学四年で習い、意味はまつ・候補、うかがう・斥候、きざし・兆候、とき・時候など。
一年を春夏秋冬の四季に分ける。この四つある季節を節切りにして、二十四に割り振ったのが二十四節気、例えば立春・雨水・啓けいち蟄つ ・春分……、立秋・処暑・白露・秋分……であり、これらの各一気ずつを三等分し、時候の季節をより詳しく表したものが七十二候。ちなみに季候というのは四季七十二候が語源になっている。また除夜の百八の鐘は十二か月、二十四節気、七十二候の数字を合わせたとする説もある。
昔は季節の語を手紙の初めに書いた。勤めはじめたころ、拝啓と書いた同僚から今ごろはどんな語を使うのかとよく聞かれた。今は郵便が速く着くので、季節の語の重要性は薄らいできたのかもしれない。パソコンを開けると季節の挨拶語が並んでいて、一応は役に立つ。
同じような言葉があると混乱しやすい。まず天候と天気。天候は数日から十数日の天気がほぼ同じ状態と考えられる場合。これに対し、天気は短い時間や二~三日程度の状態をいう。悪天候をついて出発する、天気の日が続くなどと使う。気候と季候。気候は地域の長時間の天候、季候は季節ごとの天候をいう。温暖な気候、山歩きにはもってこいの季候になった、などと使う。