なぜか私は見下されるのです。なんとなく愛嬌があるのがせめてもの取り得、あとはダメ人間、ではなかったダメ豚にされてしまう。トンと分かりませんねえ。
太ってる?大きなお世話よ。そういう人に限って、もしも私が痩せていたら、豚の癖にと文句を付けるに決まってる。大体が勝手すぎよ、人間は。フランスのルナールなんていう人は『博物誌』という本の一ページにたった一行、「蛇 長すぎる」って書いて。印税かせぎにしても、少しずるいよねえ。馬の顔なんかも長すぎる、といいたいの、かもね。馬が丸顔だったら飼い葉桶だって全部取り替えなくっちゃならないし、大散財だと思うよ。
ブウブウとうるさい?神様がそう鳴きなさいと決めたんだもん、仕方ないでしょ。ガオーッ、ギャーとでも鳴いたら、怖くて逃げ出したくなるでしょ。ほんとは豚って大人しいのですよ。「飼い方が悪いから、食事時にブウブウ、キイキイ鳴くのだ」と私のもと主人は申します。もと主人?このコラムを書いている人。戦後の一時期豚を飼ったことがある。内緒だけどね、背中に乗って遊んだこともあるそうですよ。
豚は汚い、クサイ?百%ウソです。もと主人は言います「大変きれい好きだよ。豚小屋を掃除するときは、邪魔をしないで掃除が終わるまで待っている。身体を洗ってやろうとすればドタリと横になる。指で軽く尻をつつくとすぐ起き上がって、反対側を洗いやすくして待っている。かわいいもんだ」。そして、もう二つ付け加えた。
「豚に真珠。価値の分からない者には、貴重なものも意味がないということのたとえだって。『新約聖書』マタイ伝にある。
豚の字の豕は口が飛び出したイノシシ・ブタの象形、月(肉)を付けて、肉付きのいいブタを表した文字なのだよ」と。