この字と益の字とがよく混乱した。間違えることも多かった。自分だけかと思っていたら、周りにも同じ仲間が結構いた。
益が皿の上に物を大きく盛り上げた形、あふれるというのに対して、盆は皿+分で、分は墳(土を盛り上げて作った墓)に通じ、伏せると墳墓のように丸みのある器、ぼんの意味を表す、と辞書にはある。
盆。浅くて幅の比較的広い、物を載せるための器。盆栽、盆地と使う。盆栽の原型と言われる盆景は中国生まれで、遣隋使や遣唐使についてもたらされたのが最初、その後の紆余曲折を経て日本独自の盆栽は世界へと広がった。近ごろまた大衆化の波に乗っているとかで、マスコミでも盛んに取り上げている。盆地は山や台地に囲まれた平地をいう。
覆水盆に返らず、という。太公望呂尚が若いころ、働きもせず読書にふけっていた。妻の馬氏はそんな夫に愛想を尽かし、家を出て行った。のちに尚が出世すると、馬氏は復縁を求めてきた。尚は黙って盆(洗面用などの平たい水鉢)に水を汲み、その水を地面にこぼすと、馬氏にその水をすくわせた。が、土はすでに水を吸い、泥しかすくうことができなかった。呂は言った。「一度こぼれた水は元の器に返すことができないよ」と。漢の朱買臣の話とするものもある。こんな話が基になって、夫婦は一度別れたら、元には戻らないこと。一度してしまったことは取り返しがつかないということ、の意味で使われる。
盆は日本だけの使い方では、食器や茶器などを載せる平らなふちの浅い器をいう。昔のお盆は日本人の腰の幅に作ってあった。丸盆の直径、長手盆の長手が尺二もの(一尺二寸)三十六センチで、使いやすい。
また盂蘭盆会(うらぼんえ)を略した形でお盆という。盆と正月が一緒に来たようは、うれしいことが重なること、また忙しいこと。