余すところなく利用できる有用植物である。まず、地下茎の蓮根を食べる。煮物、炒め物、揚げ物、すしの具や福神漬けの材料の一つである。
蓮根の切り口が変色して褐色になりやすいのは、含有するポリフェノールが酸化するためで、切ってすぐ酢水に浸けると周りに酢水の膜ができ、酸化酵素を空気に触れさせないで済むわけ。この後、煮たてた煮汁の中に入れて短時間で煮上げればシャキッと真っ白にできあがる。一応何となく知ってはいたが、戸野村操著『おばあちゃんの知恵』を見たら理屈も分かった。おせち料理に加わるのは、穴が開いていて先が見えるという縁起を担いだもの。
蓮の実(種子)も食用とされ、生食や砂糖漬けにされ、スープや煮物、菓子の材料にもされる。葉柄の付け根のところで葉に穴を開けると、一風変わった酒盃にもなる。
花は大型で、桃色の花弁が多数あり、芳香を放つ。仏教と縁の深い花として知られ、仏陀の誕生を告げて咲いたとされる外、極楽世界の中心に蓮池があるとされる。また泥水の中から美しい花を咲かせる蓮の姿を純粋なものの象徴として捉えたりもする。
昭和二十六年、大賀一郎博士が千葉市検見川の地中から約二千年前の古代ハスの種三粒を発見、翌年、そのうちの一粒の開花に成功した。高校生だった私は仲間の部員と現場を見学に行った。それから十数年して、その近くに住むことになったのも何かの因縁だろうか。
蓮の実はアシナガバチの巣に似ているので、蜂の巣がはちすとなり、更にハスになり、のちに植物全体の名になった。葉を荷葉、花を芙蓉、実を包む外皮を蓮房ともいう。潅木の芙蓉は蓮と区別して木芙蓉といったのが、のちに木が不用となったために、単に芙蓉となった。駄洒落みたいな本当の話。
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