KIRACO(きらこ)

Vol141 東京湾から令和を見る(5)

2020年1月24日

湊町暮らし

東京湾から令和を見る(5)

「東京湾を引継ぐ」会議は、戦後置かれて来た東京湾の姿を多岐に渡り議論。だれもが理解できる視点は、湾岸都市に分布する、小中高校の校歌が取り上げられた。全体から見えたものは、いずれも「海に伸びる街を謳歌する」ものだった。合わせて埋め立て地の工場群に立ち昇る煙を勇ましく晴れやかに讃美したものが目立った。そうした過程を経て水質、空気汚染、海浜生物の減少が、合わせて貧酸素水塊の出現が東京湾の現況となっている。環境庁水質保全課の仕事は、これ等を改善した東京湾を次世代に渡すことだ。委員には画家の池田満寿夫氏が居て、冊子の表紙を池田氏の絵が飾った。委員に多数の一人として私も、加えて湾岸の一都二県の役所から環境部も。

翌年平成3年、私の次の組合長、滝口氏は、隣の市川市2組合、行徳、南行と仲良く「三番瀬」の早期埋め立てを陳情した。埋め立て反対の私が選挙に敗けた事で、この好期にと企業庁の巻き返しがあったのかも。

しかし世の中は、レーチェル・カーソンの「沈黙の春」や「サンフランシスコ湾計画」等が一般に浸透し、千葉県知事も、環境派の「堂本氏」が「沼田氏」を破って当選、平成13年4月「三番瀬」埋め立て計画を白紙に戻すことを表明した。翌年平成14年「三番瀬再生計画検討会議」が設立され、一方では羽田空港D滑走路建設が閣議決定され埋め立てが。

対岸の米国加州桑港湾でも1999年平成11年サンマテオ国際空港の拡張計画が。この工事は法律で湾の面積を減らさずに実行しなければならず結果的に流れた。

対して東京湾横断道路は平成9年に竣工し開通したことで船橋市漁協巻網船団の水揚高は半減した。このように戦後からの経済優先気運は変わらず、日本を代表する大企業三井造船が匿していた「P CB流出」が発覚する事件が。悪い事は続くもので、3・11の震災により石油コンビナートの老朽化が表面化し、「LPG」漏れで大火災が発生。長期の消火活動が湾岸域の漁場を汚染、永きに渡って同化作用で培った、藻等が生息し、魚の餌場と成った護岸壁に大量の油が付着し、その清掃によって元の裸のコンクリート壁に、漁場が失われた。その後もコンビナートの老朽化に依る事故が続き「コスモ石油化学工場」から大量の「ピッチ」が流出しさらなる大規模な漁場被害が出た。

またまた深刻な出来事が。福島原発の放射能漏れだ。東京湾に注ぐ江戸川、荒川が汚染され2年後には東京湾全体に拡散する、と大々的に報道され甚大な風評被害が。船橋市漁協の魚が一時期売れなく、地元の東電に抗議する始末に。勿論中央省庁にも。幸いにも時間の経過と共に予想に反して汚染が拡散しないことが解った。

平成の最大の出来事は「東京五輪」だ。東京湾岸域が会場に「五輪委員会」は地球環境にやさしい事を「主旨」に「五輪」を開催。東京都が主張する「コンパクト」開催地域はすべて「東京湾の埋め立て地」で、かつて自然破壊した所だ。委員会の評価は良くなかった。そこで「小池都知事」は、さすが元環境大臣。その免罪符に「荒川河口域」の「三枚洲」を(湾の浅海域を保全することで海の生態系の保護と野鳥を守る)「ラムサール条約」に登録した。

一方千葉県湾岸域の石油コンビナートは、かつての勢いはなく、原発の代替として、安い石炭発電を計画推進しようと漁業組合に働きかけた。時代錯誤も極まりだ。

片や漁業界では平成11年水産庁方針として「優等魚」に認証ラベルを発表、環境にさやしい漁業者の魚に「エコラベル」を、良心的な漁業者を支援し、資源保護をしようと「エコラベル」制度を導入する方針を決めた。東京湾の現状を鑑みると漁業と他の経済活動と一貫性は全く無く、同じ日本国の中で矛盾に満ち満ちて漁業者は只々戸惑うばかりだ。例えば台風時に河川管理者の国交省は河川沿岸住民と水利権者を守る為に河口域の漁場を無視してヘドロ混合水を放水する。(つづく)

「旬の味」 晩秋の「この白」

12月上旬頃晴天で温かい日が数日続いた。「海苔」の時期なのに水温は15度以上。沖から電話、「積み切れないから七号を」。早速現場に「三番瀬の海苔篊沖」だ。「この白」の大群だ。例年なら盤津沖か富津沖が漁場、今年は水温が高く湾奥に、毎年秋には湾内の海水が上下逆転し、海底の貧酸素状態が解消され「スズキ」は産卵のために海底を這うように浦賀水道に南下する。「スズキ」は夏の魚で秋冬は安値だ。浮き魚を対策にする巻網は「太刀魚、サバ、サワラ」ねらいに変更。

都合の良い事に「この白」が金になる。20 tトラックに直接積むので出荷経費がかからない。用途は「釣り漁」の餌か「魚の畜養」の餌だ。食用には正月の粕漬や、回転寿司のヒカリ物に、イタリアンの「カルパッチョ」や「マリネ」、隣の韓国では「キムチ」に使うのか、店頭の大きな生簀に活「この白」を売っている。

どういう理由か今年の晩秋は漁場が近くて助かる。どのくらい漁獲するかって。一回で30t~50t巻く。1㎏40円だ。