Vol143 沈黙の春

沈黙の春

河津桜、大寒桜、染井吉野、しだれ桜――。

家のまわりの桜が次つぎにほころぶ爛漫の春なのにこの新型コロナウイルス騒ぎ。Oさんに電話してご機嫌伺うと
「いやあ、元気にはしているんだけど、宴会もできないし。酒はいっぱいあるんだけどねえ」
「お花見はダメ、イベントもダメって。これじゃ『沈黙の春』ですよね、この春は。災いのモトは違うけど」
「そうだよ。人間が自然を好き勝手に破壊してきたから地球が怒っているんだよ」。地球を、海を大切に…と叫び続けているOさんの話にうなづける。

『沈黙の春』。レイチェル・カーソンが化学物質による環境汚染を鋭く警告して1962年出版した本だ。

ここ数日の「非常事態宣言」「外出自粛」。花は咲き、鳥は啼いているが人びとはひっそりと「沈黙の春」。
おもしろいこと、楽しいことの好きな私にもつらい春。
同級生と久しぶりに京都へ一緒にと話しあっていたのに――、整形外科の先生の勧めで初めてスポーツクラブに入会したのに―、パワフルで切ない「ボヘミアンラプソディ」をもう一度映画館で観たかったのに―、法隆寺の百済観音さんが23年ぶりに東京にお出ましになるというのでぜひと思っていたのに――。「のに」ばかりの日々。

でもいいこと一つ。飲食店が休んでいるせいか、いつもはない高価なすき焼き肉や高級魚キンキなどが近くのスーパーにならんでいる。安い。うれしー。        (4月14日記。郁)