KIRACO(きらこ)

Vol145 東京湾から令和を見る(8) 「コロナショック」

2020年9月3日

湊町暮らし

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: oono.jpg

東京湾から令和を見る(8) 「コロナショック」

コロナウイルスで市場の流れが停滞した。感染拡大の原因で人と人の接触が制限され消費活動が止まったからだ。

船橋の漁船漁業は「スズキ漁」に依存している。スズキ(鱸)の旬は夏だ。鱸は洋の東西を問わず珍重されている。肉質は白身で爽やか、食通に人気で、高級魚とされ幼魚を「清子」成魚前を「福子」そして「鱸」と名がかわる出世魚だ。名古屋方面では「鯛」と並んで晴れやかな、めでたの時に盛んに消費される。

日常的には晴れやかな気分に浸る、観光地や繁華街で、祝いや祭りで、人々が賑に交流する場で、鱸を知る料理人が活躍する。ホテル、旅館、レストラン、料理屋、鮨屋、居酒屋等、人が集まることで繁盛する業界だ。これらを束ねる、観光地の活動がコロナ騒ぎで人の動きがストップした。そして物流が止まった。

鱸を何時もの通り、東京都が誉る自慢で世界一の公設豊洲魚市場に出荷。ところが荷が動かない。消費地の活動が停止したために目詰りが、そして経済が止まった。そのため、値段が通常の半値以下だ。

鱸は江戸時代の料理本「黒白精味集」に記されている魚の格付で上・中・下の上魚に。「黒白精味集」は千葉大学名誉教授 松下幸子著、柏書房刊「図説江戸料理辞典」四百五拾頁の冒頭に紹介されている。

以下「黒白精味集」に書かれたまんまを写し書きする。

“当時は魚介類の格付けがはっきりしており、「黒白精味集」によると。

上魚としては、鯛、鱸、鯉、鰭白(はたしろ)、鮒、鮭、鱒、鰆、鮟鱇、石鰈(いしがれい)、甘鯛、鱠残魚(きす)、細魚、鮎、白魚、生鱈をあげ、

中魚には蛸、烏賊、海鼠、鰡、鯒(こち)、赤魚、鮃(ひらめ)、鰹、目近(めじか)、あかえい、茂魚(もうお)、ほうぼう 、鯵、石首魚(いしもち)、うなぎ、あら、すばしりをあげている。

下魚には生鰤(ぶり)、鯥(むつ)、黒鯛、鯲(どじょう)、おこぜ、沙魚、縞鰺、生鯖、うぐい、はえ、鰊かど、生鯨、鮫、まぐろ、生鰯、ひしこ、河豚、鮗(このしろ)、こはだ、さっぱ(つなし)などである。”

以上の通り鱸は我が国に於て昔から高級魚だった。

鱸は欧米人にも絶大な人気だ。人類の歴史に於て食料の獲得は重大事だ。先人は野性の動物を飼い慣らして家畜化し、それを食肉にした。主な動物は牛、ブタ、ヒツジ、ヤギだ。鳥ではニワトリ、七面鳥、
アヒル、ガチョウ。魚は米国に於て、シーフード売場の中心には四種類の魚が、サーモン、シーバス、タラ、マグロが主な位置を占めている。

シーバス(鱸)は米国のハドソン河、河口域で、古くから縞鱸(ストライプバス)が盛んに漁獲された。小型ボート2隻で沖合をぐるりとまく地曳網を陸に曳いて自動車で曳き揚げる。何時の日か、スト
ライプ・バスは枯渇した。

地中海に於てはヨーロッパ・バスどちらかというとボラに似ている。地中海は流入する河川が少なく、栄養に貧しい海だ。深い所で5000メートルもある。鱸は浮袋を持ち浅海、岸に近い所で生活してい
る。その為古くから漁獲対象に、魚の中でシーバスは魚体が立派で、身が引き締ま
って、欧州人に好まれた。そのため盛んに漁獲され同じく枯渇した。

そこで養殖が昔から試された。なぜなら鮭(サーモン)の養殖が昔から成功していたからだ。鮭は脂分が多い5ミリ程の大きな卵を産む。孵化すると幼魚のなかには卵黄嚢が、2~3週間餌が無くても
生きられる。それで生存率が高くサーモンの養殖は昔から行われていた。シーバス
も同じく養殖出来ないかと研究を重ねたが、鱸の卵は、一魚体で20万匹以上産み落とすがやっと1ミリ程度で、水温摂氏14度で2~3日で孵化し即海面で餌をあさる。生存率は良くて2~3匹だ。50種ほどのバスを試験してやっと成功したのは英国人がアジアバスと名付けた豪州のアボ
リジニがパラマンディと呼ぶ。その生態はアユと同じで淡水に住むが産卵は海で、多産で1年中産卵する。無酸素環境でも強く病気に罹りにくい。餌は植物、夏季に淡水域に移動する。2000年代にパ
ラマンディの養殖に成功した。これ程欧米人は鱸にこだわっている。

旬の味「夏の鱸( すずき)」

何時だったか、料理研究家・栗原はるみさん出演のTVを見た。鱸の皮の部分をカリッと焼き揚げ、身肉はジューシーに。それを習いにパリだったかへ。記憶が定かでないが。私も同じく悩んで居た。
運よく、はるみさんを見て解決した。コロンブスの卵だった。今では焼色を付けてパリッと焼き揚げる方法を知った。白い皿に焼色の付いた皮面を上に、わきに緑のハーブを添えて、わきにフォークと
ナイフを。

最初オリーブオイルでスライスしたニンニクをカリッと炒め、残した薄めの油で塩コショウした鱸を皮を下に弱火でじっくり最後まで返さずに。出汁をスプーンで身肉に掛けてやる。身肉が白くなっ
たら出来上がり。冷えたシャルドネでも、ビール、ハイボール、冷えた日本酒も合う。メルローでもカベルネ・ソーヴィニヨンでも酒飲みにはなんでも合う。

アルミホイル焼きも良し鱸の切り身を茸、アスパラガス、ピーマン、香草と焼く。
(カリッとしたニンニクをトッピング)