KIRACO(きらこ)

Vol150 「風」江戸の風見はカラス

2021年7月29日

漢字を楽しむ

Vol150 「風」江戸の風見はカラス

風って何? どう説明するの? あまり身近すぎて返答に困ってしまう。一呼吸おいて、自信を持って答えよう、空気の流れが風なのだ、と。

風は、最古の文字甲骨文字で見ると鳥の形をしている。古くはおおとりが風を起こすと考えたので鳳の字が風を表したが、のちに凡+虫となった。凡は風をはらむ帆の象形、虫は風雲に乗る爬虫類で、神聖な鳥や竜の姿をした神、風神と考えられる。その風神が各地に出かけてゆき、人に影響を与え、その地域特有の慣わし・しきたり・生活のしかたといった風俗や、その土地独特の風景や産物である風物が生まれた。

風の利用といえば鳥。飛び立つとき羽ばたきをするが、空中で激しく翼を動かすことはしない。ほんの少しの上昇気流がありさえすれば、悠々と大空の飛行ができる。コウモリや昆虫も羽を使うが、羽もないのに風を利用するのに雪迎えがある。山形県米沢盆地ではシロバンバという。小グモが尻から長い糸を出して、これを風になびかせて飛ぶ集団移動。

風媒花の花粉も風を利用して散布させるが、気流に乗って二千キロも離れたところに飛んでゆくものもあるという。自前の飛行手段を持つのはタンポポである。今話題の花粉症は、スギなどの花粉が風に乗って飛ぶ。それを人間が勝手に吸い込み、身体に変調をきたす。

人間は風を利用し、帆船と飛行機によって移動手段のスピード化を図った。風車による動力源は発電に変わろうとしている。風力発電は地球温暖化・資源活用などの面から注目されている。その一方でコスト・景観・野鳥保護などの問題点もはらんでいる。

高い建物に取り付ける風見はギリシャ時代からあり、観光用にもなっているが、西洋で雄鶏が教会の尖塔に付けられたのは九世紀ごろからといわれ、日本では江戸時代、風見の鳥はカラスだった!とは、式亭三馬の『浮世風呂』から分かる。