KIRACO(きらこ)

NHK朝ドラの視聴率は昔に比べると明らかに低下の一途を辿っているようで、あの《おしん》や《おはなはん》時代を知る私たち高齢者には隔世の感があり、ちょっぴり寂しさを感じてしまいます。

私は録画しておいて、昼食を採りながら毎回欠かさず見ているのですが、今回の「カムカムエブリバディ」に流れる《サッチモおじさん》のサニーサイド・オブ・ザ・ストリートは殊更懐かしく、過ぎ去った遠い日々の記憶を一時に呼び覚ましてくれるのです。

戦後まだ日本が貧しかった頃、それでもみんな希望を抱いていた。あれから膨大な月日が流れ、ふと気付けばいつしか自分の生涯を顧みては感慨に耽っている九十歳の私・・・
どなたも同じだと思うのですがそれぞれ皆が「サニーサイド」の人生を辿るべく、ここまで一生懸命に生きてきた筈です。

でも!頑張っただけで、すんなり陽向の道を歩いて来れたかどうか?

答えは《ノウ》ですよね!

まあ考え方によるかもしれませんが、どうあがいても突き破れなかった何か・・・そう《運命》というか、頑張ってもどうにもならなかった壁って結構あったような気がします。

私には此処三十年来取り組んできた「逆さ歌」=どんな歌でも逆回転してウシロから歌える=という変な特技があるのですが、それをネット枠YOUTUBEに載せ続け、その数今や六十数曲。

《目指すは死ぬまでに100曲アップ!》などと豪語しているところなのです。

しかし・・・実は以前、その《逆さ歌》で私がテレビに出ているのを見た古い友人から、途轍もなく厳しい、誹謗めいたお手紙を頂いた事がありました。以来それはずっと心に引っかかったまま・・・だったのです。

昔、一緒に声楽を習っていた仲間の一人でしたが、要約すると、
「貴女のなさっている《逆さ歌》って、私にはどうしても理解できません。いえ、認めることが出来ません。貴女はいいと思ってなさっているのでしょうが、どこがいいのか、さっぱり理解できません!
ある意味芸術に対する冒涜ではないでしょうか?
私たちに熱心に歌を教えて下さった先生に対しても失礼なのでは?」

そんな内容のお手紙でした。

私はもともと「打たれるとヘコむ」性分なのです。ドドッと落ち込んでしまいました。以来、この痛手は心に引っかかったまま二十年近くも。

いくらテレビからお声をかけて頂き、拍手を頂けても、心の片隅では(所詮、私の歩んで来た道は裏街道でしかないのだ)・・・そんな自嘲めいた呟きが消え去ることはありませんでした。

でも、歌を逆回転して聴こえてくる裏メロディの不思議な美しさは、それらを上回る魅力があり、私の心を捉えて離さなかったのです!

ある時テレビを見ていたら《駅ピアノ》で、初老の男性が拙い手捌きで「エリーゼの為に」を弾いていました。硬い指先は小刻みに震え、どうにか弾き終えたその瞬間、それまで半ば笑いながら聴いていた女子高生の群れから大きな拍手が!恐らく彼女らにとってはお父さんに近い年齢だったはずです。

何故だか涙がでました。
「ああ、私の逆さ歌もこうしてナマで聴いてみて欲しい!」
以来、どうしても、例え路上ライブでもいい、お客さまにジカに聴いてもらいたい、そう願ってきました。

そう、願えば叶う!

先日、「プラッツ習志野市民ホールの《ワンコイン・コンサート》に出演しませんか?」という嬉しいお声がけを頂けたのです。
もちろん、有り難くお引き受けしました。時期は、ちょっと先の六月。
その日はただ逆さ歌をご披露するだけでなく、みなさんにもその仕組みをご説明し、一緒に歌って頂けたら・・・と思っています。

《「きらこ」ご愛読》の方へ切なるお願いです。
どうか六月のひと日、プラッツ習志野市民ホールにおみ足を運んで頂き、四十五分間、ナカダに「陽のあたる道」を実感させて下さい!(願わくば《コロナで中止》なんてことになりませんように・・・)そして、私の心をズタズタにした古い手紙のことも、笑って吹き飛ばせるような楽しいイベントとなりますように!