KIRACO(きらこ)

Vol156 東京湾から令和を見る(19)

2022年8月4日

湊町暮らし

「知床観光船遭難」

北海道知床岬で遊覧船が遭難した。荒天の中エンジン故障、これは致命的だ。操船の自由が無く波に翻弄され浸水を防げず、ポンプも使えず排水も出来ない。風は北西オホーツク海から真ともに岬の先端に吹き付ける。岬に当たった波高は3mを超す。波は来る波と返す波とで三角波に。水深は100m潮も早く錨がきかない。船は船首から波を受けるのが安全策で、船腹からは横波を受け、揺れが激しく浸水して横転の危険が高い。錨がダメな時は船首から落下傘様の流し錨を投じ船首を波に直角に向け安全を保つ。一流の船乗りは時化を避ける、「カズワン号」は突風に因る高波に呑まれた。

我が国の船舶の許認可はトン数重視で、船の構造や安全性はあまり重点的ではない。船長は突風や嵐をいち早く察知し危険な現場から早急に離れる事だ。

東京湾奥に於いては南西の突風が最も危険だ。日本海を低気圧が急速に発達しながら北上する時、最もあぶない。急に天候悪化予測があった時は船出しない。やむを得ず一時の凪を当てに出航した時は風が吹き込む前に帰港する。風は目で見える。沖の水平線が風波で黒くなる。この時現場に風波が無くても帰港準備を即座に逃げ帰る。風を受けてからでは操船困難に。

嵐に強力な船は軍艦だ。どんな大波にぶつかっても気密性に優れている。ボトムシップで、水が半分入った栓をしっかりしたビンのようにどんなに揺れても反転しない。大平丸は小型まき網許可漁船でトン数5t未満4.9tだ。即ち4.9 ㎥の気密空間を有する小船だ。積荷は最大4.5t程度が限界で、4.5tの内訳はエンジン、揚網機械、網、燃料、船員等々で最大積時は乾舷0で大波一パツで沈没する。

こんな性能の漁業に当局は近代化、能率化、安全性を求める。船は許認可制限トン数の範囲で出来る限り大きくする事を考える。当然気密性も最大限に。ところが検査では4.9㎥を厳密に守る為に船体上部構造はザル様にしないとトン数が増え許可されない。防波に見張に役立つ船首部のバクデッキの気密性は沈没時、船首浮揚に必要だ。がトン数オーバーの際はデッキにドリルで無数に穴を開け気密性を無くし減トンし許可される。

舷側も外壁と内張で巾15㎝程の空間が有り復元力を良好にする。がトン数をオーバーするとこの気密性も内張を穴だらけにし気密性を無くさないと許可されない。

知床の船も許可ギリギリの造船設計だと同じ様で安全性より許可トン数厳守で気密性を度外視の傾向が考えられる。ニュースで船内の隔壁が船首から船尾まで筒抜けに。

これでは浸水時急速に水船に、即ち空気室が足りないため、浮力が弱いのだ。5t未満の大平丸はブリッジも機関室も減トンの為に天井が開放構造だ。こうして作業空間、居住空間、各種機器の設置場所を確保している。世界の先進漁業は利便性、安全性を優先にトン数制限は厳しくない。漁獲割当ては科学的、厳格に行われている。安全性を考えると知床の海と東京湾と同じ発想も間違っている。

安全対策の救命胴衣、装着が救命に役立つ東京湾、救命にならない知床岬。東京湾は真冬でも7℃、知床は事故時の水温4℃、魚箱中の温度で、入水時、瞬時に絶命する。

旬の味 夏の魚「スズキ」と「小肌」

スズキが旨くなってきた。スズキの旬は夏だ。鮮度によって食べ方まず「洗い」「刺身」「ソテー」「野菜とホイル焼」、焼物は塩胡椒で。浅草で「すし」の型板を入手した。訳は小肌の酢酸漬が旨い。炊きたての飯で食すと最高だ。

握り「ずし」が旨い。「すし」飯が炊けても握るのが難しい。

数を握ると型が不揃いだ。そこで型抜きで握る事に。

小肌を1㎏、三枚に下ろす。100枚程に、塩漬に一日、二日目、水で充分に洗って、軽く水を搾り、酢に漬ける。後は食す時に酒か、ミリンまたは砂糖を使い甘味を加えて食す。酢酸だけだと味がキツ過ぎる。酢飯は水を少な目でコワ飯に。飯台でよく冷まして使う。酒のさかなに最適だ。