KIRACO(きらこ)

太陽、空気そして水

2025年3月20日

湊町暮らし

 正月のTVで三番瀬からの富士山の絵が映っていた。
船橋浦から市川行徳海岸に続く干潟の先に浦安の街並がその向うに東京の街影そして丹沢山と箱根の山並を圧える様に富士山が、実に美しい。
三番瀬公園は国が認定した「富士見百景」の名所の一つだ。

 毎年元旦に船上から初日の出参拝者をNPOベイプランで計画し参加者を募って海(東京湾)に繰り出している。
今年もBPA(ベイプラン、アソシエイツ)のメンバーは早朝5時半集合、50名分の救命胴衣、折畳み椅子、祝盃の御神酒そして冷えた身体を温める漁師汁を用意、午前6時20分出港。
日の出時刻は30分後だ。
今年は雲は皆無、風速北の風3m╱sec、船橋航路6番ブイの東の海上に船を流し、左手に幕張自慢のビル群とロッテ球場を、手前北側に習志野茜浜を、船橋航路を挟んで遥かに船橋三番瀬公園の松並木が、西方向に真白に雪を頂く富士山が、明け始める時に堂々と鎮座している。
東京湾は富津崎を越え、房総半島の先端、野島崎をかわさない限り水平線は見られない、内湾はどこを見渡しても街並や工場群がその後背に房総の山並、鹿野山や鋸山が、夏の太陽は南進で山脈の後ろから顔を出す、冬は房総の山脈の無い水郷方面から。
一番の平地から日の出が。
微風で雲一つ無い。
何時もは地平線上に雲の土手が。
今回は全くの皆無、遠目の黒々とした街のシルエットの縁が金色に輝き、そして赤く染まり真赤な太陽が目を射貫く光を放つ。
思わず手で目を覆う。
冷え切っていた身体が一瞬に温む。
地球の生物を育む限り無いエネルギーを正に悠久の時を惜しみ無く無言で放ち続けている。
今冬の寒さに凍えていたのに、辺り一面、別け隔て無く、昇る朝日が寒さを跳ね除け温かく包み込む。

 東京方面西空に顔を覗かしていた富士山が赤富士に。

 地球上の生命は太陽と空気と水が有って存在する。
今正に水の惑星地球上に水を満々と湛えた海上で太陽光を浴び、風速3m╱secの空気の流れを全身で受け止めている。
この悦びこの思い、この感激。御天道様有難う。
この気持を同舟の参加者全員に赤ワインを振る舞って一同揃って「万歳三唱」。帰港途中、正月を祝う休みの船舶がマストに松飾を掲げ静かに碇泊、海上保安庁の巡視船、自衛隊の南極観測船「しらせ」が隣合せに停泊、向かいの埠頭には外国籍の貨物船とタンカーが真新しい透き通る光の中で輝いている。
初日の祝福を受け漁港に各自感激を胸に帰還。
漁師汁の具がアサリからビノス貝に。
今年は貝が不作でスズキに、太陽は毎年変わり無く顔を見せるのに人間を取り巻く環境は年々変化している。
この時期最盛期であるはずの海苔が不作だ、気候変動という言葉が重くのし掛かる。
トランプ大統領は気候変動は自然現象でCo2説は嘘だと、化石燃料の増産を進めている。
地球が時々刻々人の手で変わっていく。
東京湾の日の出も山並の彼方からだった。
現在は見渡す限り人工物だらけだ。
人間は生存を掛けて地球環境を変えた。
石油基地化した内東京湾の明日は。

旬の味

 利幅の無いものは市場価値が無い、流通に乗らない手間の掛かるものは消費者が振り向かない。
スズキは夏の魚だが東京湾では冬も底曳網漁で漁獲される。
真夏の半値以下だが、揚物にするとサッパリとした味が評判で学校給食に人気だ。
冬の旬は鮗だがニシン科で小骨が多く若い母親からは嫌われている。

 魚屋はマグロは喜ぶが鮗は売れても儲けが少なく見向きもしない。
我が国の魚食は鮮度第一で刺身や寿司が主流でパン食に向かない。
パン食で魚を好んで食べる国にイタリアが有る。
魚を選ばない何でもまとめて食すブイヤベースは旨いし評判だ。
これを真似たいが東京湾では魚種が激減。
エビ、カニ、イカ、タコそしてメゴチやハゼ、キス、カレイ等が減った。

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