KIRACO(きらこ)

ぼくは しってる

2025年11月6日

独断独語独り言

 ぼくのお世話がかり、小間使いのマリアンネは東海の小島の磯に近いところから来た。8月にして晩秋の気温の北国から何を思ったか、9月に入ってもまだ暑い熱帯化したあの極東のちっちゃな島に帰ってった。ちょっとモロモロ片付けてくるねって。ま、いいけど。『空港に降り立った途端湿った熱気に包まれて母の胎内で羊水に浮かんでいたときの記憶が蘇る』って妄想語ってたけど、ンなことあるわけない。だけどなぜ、ヒトはいつまでも生まれたところや昔に戻りたがるんだろ。ぼくは懐かしい、恋しいって気持ちはわからない。わからないことも気にならない。いま狙いをつけたモノを捕まえることのほうがだいじだもん。ジェームスとマリアンネはすごいことでもみるように「親に教わったわけでもないのに、えらい」って言うけれど、喰うこと、寝ること、出すことなんてそれが生きてるってことだからあたりまえ。それ教わらなくちゃいけないの、ヘン。喰うためには自分で動く、あたりまえ。
食べられなくなっちゃうとか、動けなくなるほど食べちゃうとか、なんかに頼らなきゃ眠れないとか、ヘン。ぼくがぼくでホントに良かった。喰えなくなったらバトンを次にわたす。ぼくをわたす。いまとここを次にわたす。フェリ姐さんが、マイキー兄ちゃんがしたように。それでいいんだ。執事のジェームスは自分の仕事で頭がいっぱいになると、ぼくがどこにいるか忘れちゃう。あんなにマリアンネに言われてたのに。ま、いいけど。ぼくは独立独歩唯我独尊の絶対王者だから。いま生きてるってことにかけちゃ、ぼくはムテキだ。それにぼくにはネットがあるし。

 お彼岸がずれたのか、暑さがずれたのか、9月の半ば過ぎてもここはとんでもなく暑くて湿ってる。カラダおいてきてホント良かった。ここはぼくにはちょっと厳しい。ホントはぼくたちは生まれたところで、自分の足でたどり着けるとこまでをナワバリにして生きてる。世界のあちこちに散らばるのはじぶんの気持ちと関係ない。ま、生きるってそういうこと。いまとここをそのまま受け入れてる、ぼくは。でも今はマリアンネにヒョーイしてるんだから、体感はマリアンネが引き受ける。自分で決めたのに、マリアンネったら時差ぼけだとかぼやいてる。ボケは時差のせいばかりじゃないよっていってやりたいけど、あまり慰めにならなさそう。ぼくたちにはカラダ時間ひとつしかない。ヒトは身の丈超えてできないことを無理した挙句、愚痴を言うモノなんだ。どう喰うどう寝るどう息をするまでソトにお任せして、何かのせいにする、ヘン。

 マリアンネが家に戻ればじきバンレイセツ。懐かしいモノたちが帰ってくるんだって。川の向こうか 雲の上か、信じてるとこがそのモノの居場所、ここじゃないむこう、過ぎたときがあるところ。ぼくたちは向こうとこっちをいつもゆききしてる。狩の仕方も手強いテキのこともフェリ姐さんが伝授してくれた。ここにいて、好きなヒトにヒョーイして護ったりもする。エンのあるところを拠り所にするネットワークがあるんだ。だからぼくはしってる。そこにもいたから、いないときもいたから。

 草の根運動ってホントはネットワークだよ。根は地中で絡み合って生きてるモノも生きてたモノもみんな網羅して情報を共有してる。いつかみんな地に還るんだから。ぼくも拡張に協力する。身体中にひっつき虫つけてくるとマリアンネはむすっと櫛でとっちゃうけど、その前に足の向くまま気の向くままあっちこっちにおいてくる。草も木も地表をゆくぼくたちも空を渡る鳥も、役割分担して一緒に生きてる。ヒトだけ仲間外れ。なんでも自分一人でやってきたって思ってて。草だけ喰ってれば何も殺してないって。草にいのちはないって思ってる、ヘン。仲間はずれじゃ、生きていけないんだけどね。

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