忙しいという字は「心を亡うしなう」と書くんだよ——
そう言ったのは、確か「フーテンの寅」さんだったと思う。
違ったかな、いや、確かにそう。
あの方は、ちょっとおかしなところがあるけれど、なかなかうがったことをサラリとおっしゃる。
——それを言っちゃあ、おしめえよ——
というフレーズも私は大好き。
みなさんは忙しくしていませんか。
心を亡っていませんか。
こどもたちが小さい頃、幼稚園、小学校に、五人のこどもたちを通わせているお母さんがいた。
こどもたちを送り迎えし、東京の会社に勤める夫を朝夕駅まで車で送り迎えしていた。
お料理が上手で、パンやケーキを焼いたり、本格的なおいしい料理もていねいに作っていた。
そしてパートの仕事もしていた。気がきいて、気さくで、いつも身ぎれいにしていたのも忘れられない。
お子さんたちがたくさんで、よく動きますね。
と言うと「私はほかの人生を知らないから——」て楽しそうにしていたっけ。
(郁)
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