KIRACO(きらこ)

「象」越南から江戸へ来たゾウ

2026年6月4日

漢字を楽しむ

 ショウ・ゾウの音がある。気象・対象・象形文字・後藤象二郎・堂本印象はショウである。像・
様と通用して、かたち・ありさまの意味に用いている。

 もともとこの字は大きな鼻を持つ象の形から来た象形文字である。甲骨文字に「象を集(=獲、え)んか」と占い、「宮を為(=つく)る」とあることから、殷の時代には象を土木工事に使っていたことが分かる。紀元前五、六世紀ごろには長江北岸にまだ象は棲息していたという。

 江戸時代は鎖国をしていた。外国の文物は入らなかった。象を見た人などいないだろうと思いがちである。ところが違っていた。享保十三年(一七二八)、ベトナムから象がやってきた。長崎に上陸した牡牝二頭のうち、メスは病死した。残ったオスは翌年三月江戸までの長い旅に出た。四月末に京都で中御門天皇の御覧に供し、御所に入るために従四位の位を受けた。人間ならば貴族である。やがて東海道を下って五月末に江戸城に入り、将軍吉宗が見物した。その後浜御殿で一般に観覧させた。全七十四日の行程で多くの人が象を見た。この象はその後十四年も生き続けた。

 「ゾウさん、ゾウさん、お鼻が長いのね」の解釈を巡っては諸説あるらしい。動物園で親子が象を見ながら話しているとするのが一般的か。いや、人間の親子の会話でも象同士の会話でもない。他の動物が子どもの象に「ゾウさん、お鼻が長いのね」とバカにしたように言った。子どもの象は明るく「そうよ、母さんも長いのよ」と応えた。嫌味を嫌味ととらない純真さに感動したとする、新しい見方もある。自分の首が長いのが気になっているキリンの子が話しかけたのではないかと推測するのもある。詩に正解はないというのだが、どの解釈がいちばん近いのだろう。

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