KIRACO(きらこ)

Vol144「塩」自然塩でいいですか

2020年8月6日

漢字を楽しむ

「塩」自然塩でいいですか

塩分を摂りすぎないように!どこを向いても大合唱である。確かに摂りすぎはよくない。かといってあまり控えめにしすぎてもいけない。故人曰く、過ぎたるは及ばざるがごとし、と。

先日食料品店に行って、普段はあまりみることもない食塩の棚を見た。随分いろいろの塩がある。昔、塩田があった地名を被せたもの、昔ながらの製法を遵守しているらしいもの、ミネラル豊富で健康志向の自然塩など。だがちょっと待った!

昔ながらの塩田?伝統の製塩法?採算が合うか疑問だ。自然塩?確かに自然という響きは美しい。だけど自然ということは無防備ということ。微量ではあっても泥や砂、ゴミも混じる。空中からの鳥の爆弾投下の一部分も混じっていると見るほうが、より自然ではないか。

昔の人は塩を単に味付けや保存のためだけではなく、実に上手に使いこなした。例えば、青菜類を色鮮やかに仕上げるために、直接塩をまぶして軽くもみこんでからゆでた。フライパンや中華鍋についた油汚れは、火にかけて鍋がうんと熱くなったところへ塩を一振り入れる。熱して溶けた油を塩が吸いつけるので、後は紙でふき取ればよかった。古くなって張りもなく茶色に変色してしまった切干大根は、熱めの湯に通してから水気を絞り、塩もみしてからもう一度湯に通せばもとに戻る。チューリップやポピーなど茎が軟らかい花は切り口に塩を付けて軽くもむと長持ちする。こうした長い経験に裏打ちされた塩の使い方は、知識というより知恵であり、親から子へさらに孫へと受け継いでいけるとよいと思う。

塩のつく言葉を見ると、サラリーマンがある。サルとはラテン語で塩をさし、塩を買うために兵士に金が与えられたことがサラリーの語源。青菜に塩、塩梅、手塩にかけるなどもある。