Vol151 「栗」イガ以外用途は広い
焼き栗、蒸し栗、きんとん、羊羹、外にもいろいろな料理に使う。
「……何といっても飯の王は栗飯であった。私たちはそれを食べたいばかりに、何度も何度も山で柴栗とりに行った。イガをむく為に手の傷だらけになるのをいとわなかった。……秋の彼岸頃になると、私は今でも少年の頃、山へ柴栗とりに行ったことを懐かしく思い出す」と、相馬御風は「栗めし」の思い出を書いている。
前に読んだ手紙の本に、「ありがたく虫食いの栗食ひにけり」を引いて、物を贈られたときには直ぐにもお礼状を書かなくてはいけない、とあった。正岡子規はそれを実行した人らしいが、凡人はややもすると遅くなりがちである。
また、お礼を言うために相手を電話口に呼び出すのは失礼だ、手紙にしなさいと教えられた。
今は電話そのものも便利になったし、相手の声や安否を聞くこともできるし、そうそう失礼とばかりとも言い切れないではないか。
まあ、時と場合によりけり、であるけれど。
少し横へそれてしまったが、栗の歴史は古い。中国では紀元前五〇〇〇年ころの半坡遺跡から発掘されたというし、『詩経』や『論語』などにも出ている。
日本の古いところでは『古事記』や『日本書紀』に見え、『万葉集』には山上憶良のあまりにも有名な「瓜食は めば子ども思ほゆ栗食めばまして偲しのはゆ……」がある。
栗の用途は広く、昔から村祭りや祝い事、正月料理には欠かせないものであった。
旅の携行品としても重要であった。
戦時中、亡母は出征兵士にマメ・カチグリ・クルミを贈った。
甥が出征するときも手渡ししていたと姉から聞いた。
達者で・戦に勝って・無事に帰ってと縁起を担いだのであろう。
栗材は耐久・耐湿性が強く用材として活用され、葉や樹皮には薬効成分がある。