「育休中のリスキング後押し」
首相答弁に批判高まる
先日、朝日新聞の社会面に、こんな見出しの記事が出ていました。
参議院本会議で答弁する岸田首相の写真も大きく載っています。
《育休》、つまり子供が生まれた家庭で、母親が仕事を持っている場合、夫の協力は必要不可欠なもの。
そこで、《育児休暇》という形で夫側に有給の休日制度を設けた…
育児の負担を出来るだけ少なくし、子育てを円滑に…そうすれば第二子、第三子を持つことも厭わないだろうと。
そこまではよかったのですが、岸田さん、《若い夫婦にとって、もっと魅力的なご褒美はないだろうか?》とお考えになったものか、
《育児休業中に一定のスキルを身に付けたり、学位を取ったりする方々を応援しよう。そうすれば、休暇中、と言えども、逆にキャリアアップのチャンスにもなるのでは?》と、そんな発言をなさった。
これに対して野党側からブーイングが上がった、というのです。
これを読んで、私はむしろ笑ってしまいました。
育児を一体どうみてるの?子守のヒマの合間にお勉強でも、とは?
国のトップに立つ人がこれですから、何とも心許ないお話ですよね。
それにしても最近の世の中、確かに子供の数は減っていく一方です。
昔は我が家の界隈も一日中子供たちの歓声が絶える事がなかったのに、今ではまるでゴーストタウン。
これではいけない。何とかして少子化に歯止めをかけなければ!というわけで、《少子化社会対策基本法》などというものが出来、今や対応に大わらわです。
子供を産んだご褒美…なんて言うとお叱りを受けそうですけど、第二子、第三子ともなるとその給付金も相当な金額に上るのだとか。
考えてみると、私たち昭和ひとケタの世代が同じ標題を耳にするのはこれで二度目。
そうです、戦時中、しきりに叫ばれていた標語の中に「産めよ増やせよ!」
というのがあって、街のそこここにベタっとビラが貼り出されていたものです。
でも当時のそれは、将来日本軍の戦闘要員として使う為、であり現代とは異なる意味での、「お上のお達し」だったワケなのですけれど。
その他にも当時、国策に沿った、面白い標語が沢山ありました。例えば
★贅沢は敵だ!
★パーマネントはやめましょう
★欲しがりません、勝つまでは
★ガソリンの一滴は血の一滴
などなど…。
こうしてみるとその世相ごとに私たち《民衆》は考える事も生き方も上層部に一括りにされてきた、そんな気がしてならないのです。
私にはその意味で怒りに近い思い出があります。
「産めよ増やせよ」とは真逆に「産んではなりません!」とのおかみからのお達し…そんな時代が過去にあったなんて信じられますか?
実は私、結婚してから三年目にしてようやく息子を授かったのです。二十五歳の春でした。
今で言う《妊活》を続け、随分辛い日々を送っての末、生まれて来た我が子。
可愛いなんてものではありません、もうベッタリの日々でした。
そこへ突然現れた、白い上っ張りを着た二人のおばさん(?)
聴けば都の保健所の職員なんだとか。曰く、
「今、日本は戦後のベビーブームで増えに増えている子供たちに、頭を抱えているのをご存じですよね」なんだかお叱り口調なんです。
「ですからオタクでも第二子をお作りになることは、当分お控え下さい!」
その頃の風潮、今思い出すとまさに噴飯モノなのですが、都から来ました、とか、公のいわゆる《お役人》と聞くとそれだけでもう、反発してもムダ。そういう世の中だったのです。
その日はお話だけでお引き取り下さったのですが、さらに追い打ちでも掛けるように、二人で現れ、《勿論部屋の中までズカズカ・・・》今度は何とお土産付き。避妊の為の何やらご持参です。
ご丁寧にその使用法まで親切な説明付き。
私は危うく大泣きするところでした。
あの辛く、寂しく悲しかった妊活の日々が突然蘇ったから…です。
人間、九十年の余も生きてると、ホント色んなことに出くわすもの。
でも今の日本、《産めよ増やせよ》のスローガンは当分叫ばれ続けることでしょうね!