KIRACO(きらこ)

Vol138 東京湾から令和を見る(2)

2019年9月5日

湊町暮らし

東京湾から令和を見る(2)

昭和37年(1962)6月小説家阿川弘之氏は東京調布飛行場発、セスナ機で東京上空から東京湾、そして千葉県五井に向かった。その時「緑の少ない東京」と言った。(戦争で焼野原になって間もない為だ)。次に、「東京湾はどこ迄行っても泥の色」(夏の東京湾はプランクトンの発生が盛んで茶色に変色する。合わせて埋立工事の浚渫船が湾北部海域一帯を覆う様に浚渫埋立の最中だった)。「何とも海として有難味の無いもので一層船の通る路だけ残してさっさと全部埋め立ててしまったら良さそうな気がする」と巻末の解説「空から見た日本」に書いている。
 時を同じくして太平洋を挟んだ、米国加州バークレー市でも大規模な埋立計画を発表した。この時住民から強い反対の声が上がった。理由は海から見た街の景観が損なわれるから、だった。反対運動はカリフォルニア大学バークレイ校学長クラーク・ケール夫人を中心に他2名の夫人達が、湾の浅瀬を埋め立てると湾は川の様になってしまう、それで良いのか、と。(Bay or River)とキャンペーンを張り各種団体、その他環境団体のリーダーに呼び掛け「サンフランシスコ湾を救う会」を結成。運動はバークレー市から他の市に広がり、結果1964年に「サンフランシスコ湾保全調査委員会」が生まれ、「湾を救え」法案がマカティア上院議員とペトリス下院議員の働きに依って上下両院を通過、こうして運動から3年を経た1965年(昭和40年)「湾を守る法」「マカティア・ペトリス法」として結実した。以後いかなる埋立も湾に害を及ぼすもの、埋立は原則行わないとし、野放しに荒廃したサンフランシスコ湾を改善し次世代に引き継ぐ為に50年計画を策定。1968年(昭和43年)の事だった。
昭和42年(1967)京葉港建設に490ヘクタールの埋立計画策定。昭和44年(1969)京葉港地区1期として約132ヘクタール埋立開始、市川1期埋立着工。この時友納千葉県知事は「昭和50年代には湾は汚染され漁業が出来なくなる。早急に転業する様に関係各漁組を指導した。
 漁場環境の悪化は現実となった。湾北部江戸川河口域に面する浦安漁協の海苔漁場が江戸川沿に位置した本州製紙工場からの廃水で大被害が発生し社会問題化。これが大きなきっかけとなり環境庁が昭和46年(1971)に設定された。
 昭和47年船橋市漁業組合の所有する漁業権の全面放棄が決定。「海苔・貝」漁業の終焉の瀬戸際、翌年昭和48年(1978)中東戦争勃発、石油に頼った日本経済は不況となり、埋立造成地の費用を産業界に依存していた千葉県は資金の調達が止まり全て埋立計画を一時停止した。
 この事が三番瀬海域が残る一因となった。埋立が金科玉条だった友納知事は昭和50年(1975)に川上知事と交代した。
 翌昭和51年米国は200海里漁業専管水域設定法成立、日本もこれに倣って昭和52年に漁業専管水域200海里決定。これに従って遠洋から沖合そして沿岸へと漁業政策が転換した。そこで国策に沿って、川上千葉県知事は「東京湾漁業は後退させない」と宣言し東京湾漁業の消滅の危機を回避した。
 昭和56年(1981)川上知事は5000
万円念書事件で辞職。沼田知事に、景気が回復、色々政治の流れがあった。船橋漁協所有漁業権の埋立は延期されているだけで何日工事が開始されるか不透明な時間が過ぎた。三番瀬海域約1500ヘクタールもある広大な土地造成が環境重視時代の流れの中で、県は埋立審議会を開催しながら早期決着を試みたが時代の変化は早く埋立面積の縮小760ヘクタールに、環境影響調査が厳しく断念。取り合えず、環境調査の必要ない60ヘクタールのコンテナー埠頭を三番瀬の束側、船橋航路に平行して埋め立て土地造成したいと船橋漁協に打診。私が組合長だった。「全体の将来像を示し、漁協の円満な将来が想定されなければ途中漁場環境が悪化して、真綿で首を絞められる様な結果になりかねないのでは」という事で承知しなかった。県はあくまで、漁業より土地造成が方針で東京湾の漁業を中心とした自然環境の保全等より経済優先、バブル前夜だった。  つづく


旬の味

船橋市には姉妹都市が二つある。一つはデンマーク、オーデッセン市。今一つは米国カリフォルニア州、ヘイワード市だ。5月19日ヘイワード市の節さんを偲んで18名程集まってパーティーが行われた。きっかけはたまたま普段は合わない女友達と電話で話した。話の流れの中で数年前に他界したヘイワード在中で大変お世話になった節さんの話が。命日が5月19日(日)で、何かしたいと彼女の弁。そこで、カリフォルニア・ワインで偲ぼうという事に。彼女がヘイワードに電話すると節さんの旦那がワインを送るという事に。タイミング的に「スズキ」が旨い季節なのでスズキを食すことに。頭と骨は「荒汁」「荒煮」、刺身を「洗い」と「カルパッチョ」、野菜・きのこ・アスパラ・ピーマン等ふんだんに添えた「スズキのアルミホイル焼」、「スズキの茶漬」、その他ピザパイ。
 勿論酒はすべてだ、ビール、日本酒、焼酎にウイスキー、ワイン、ワインはピン切りで難しい白も赤も…。