KIRACO(きらこ)

Vol159 「粥」人生いろいろ 粥も……

2023年2月23日

漢字を楽しむ

初めて出会ったとき、誰かがふざけて書いたもので、漢字ではないと思った。ところがちゃんとした漢字であった。シュク・イクという音があり、訓はかゆ。弓二つが湯気を表し、粥は水を多くして釜のふたを開けないまま煮る、かゆのこと。

それならばと、卵の両側に弓がついている字は何と読むかと真顔で聞いてみた。相手が答えられないのを見て、温泉卵に決まっているじゃあないかと言うと、手を叩いて喜ぶかと思いきや、私の頭を軽くポクンとやってくれた。おかげで粥魚と書いて木魚のこと、という何の役にも立たない知識が妙に納得できた。若き日の思い出。

粥を食べる習慣は中国が大先輩で、仏教の教えにも粥の功徳を説いたものがあるそうだ。日本に米が伝わってくると、米を焼いたり煮たり蒸したりと、いろいろな調理法が考えられ食べられてきた。粥もその一つだった。貝原益軒は粥信奉者の一人で、朝早く粥を温め、軟らかくして食べると、胃腸を養い、身体を温め、つばきが出る。寒いときにいちばんよろしいと、『養生訓』に述べている。

古典には粥がしばしば登場する。水分の少ない堅粥(かたかゆ)が現在の飯、水分の多い汁粥が現在の粥である。その粥も濃さによって名前が変わる。全粥とは米と水の重量比が一対五で炊いたもの、七分粥は一対七、三分粥が一対十五となり、米一に対し水十の割で煮て、汁をこし取ったものが重湯、離乳食や病人食など目的に応じて作り方を決めている。白米の他に昔は麦や粟などを入れた。今も茶粥、七草粥、小豆粥がある。

関西で粥が喜ばれるのは、食習慣と飯を炊く時間が原因か。関東は朝飯を炊き、昼はそのまま、夜茶漬け。関西は昼に炊いて夜はそのまま、翌朝残った飯を粥にして食べることが多いから。