KIRACO(きらこ)

「歌」春の小川は原宿近く

2025年5月29日

漢字を楽しむ

 ことばに節をつけて声に出して歌うもの、これが歌である。普通は曲と歌詞の両方をさすが、曲だけを言ったり、歌詞だけを言ったりもする。人間ばかりでなく、鳥も歌うし、小川の流れも、そこにやって来たカエルが愛をささやくのも、つまり自然界の音や動物の鳴き声などにも歌という。

 ここまで読まれた方は『古今集』の仮名序を連想したり、岸に菫やれんげの花咲く春の小川の風景を浮かべたりしたかもしれない。あるいはカエルの歌を輪唱した歌声が耳の底に残っているかも。それはそれで結構、でも『春の小川』のモデルになったのは、流行の先端東京は原宿のすぐ近くを流れていた河骨川だった、なんていうのも紛れもない事実、今は暗渠になっているけれど。

 うたには、歌のほかに唄・謡・詩などの文字を当てる。一般的には歌と書くが、長唄・端唄などの邦楽や、民謡では多く唄と書く。表題として使って、それを歌った詩やそれを描いた詩的で叙情的な作品をいうとき詩の文字を当て、うたと読む。例えば、映画『ある愛の詩』など。

 歌は哥と欠(あくび)からなる。哥は音を表し、欠は口をあける意味。人が口をあけ大きな声で歌を歌う意味を表しているのが歌の文字である。

 歌という語はどこから来たか。語源を調べてみると実に様々である。

① うたうからきた、手拍子をとって歌謡をするから、打ち合うことだろうとする。

②  うたあうの約まった形、自分の気持ちをまっすぐに訴える。真情を吐露するのであるから、抑揚も生まれ、こえもリズミカルになってゆく。

③ ウは歓喜を、タは事物を意味し、宴・歌などの語を派生する。

 その他まだまだいっぱいあって、決めかねる。歌留多・加留多と書くと純正日本語のようだが、もとはポルトガル語である。

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